翻訳とローカリゼーションは何が違う? 海外向けコンテンツで企業が間違えやすいポイント
更新日:9月14日

海外向けのWebサイトや営業資料、製品説明、契約書などを作るとき、「日本語を英語に訳せばいい」と考えてしまうことがあります。
もちろん、内容を正確に翻訳することは重要です。
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しかし、海外市場で実際に相手へ伝えることを考えると、単なる翻訳だけでは十分ではないケースがあります。
そこで必要になるのが「ローカリゼーション」です。
さらに、企業の現場ではもう一つ大きな問題があります。
それは、
「翻訳を発注したものの、納品された翻訳が正しいのか社内で判断できない」
という問題です。
社内に十分な語学力を持つ担当者がいない場合、翻訳会社への指示、納品物のチェック、用語の統一、修正依頼などを適切に行うこと自体が難しくなります。
つまり、企業の多言語対応では「翻訳すること」だけでなく、翻訳プロジェクト全体をどのように管理するかまで考える必要があります。
今回は、翻訳とローカリゼーションの違いから、企業が海外向けコンテンツを作成するときの注意点、さらに翻訳ディレクションや多言語運用について解説します。
翻訳とローカリゼーションの違い
翻訳は、原文の意味や情報を別の言語で正確に伝える作業です。
一方、ローカリゼーションは、翻訳した内容を、その国や地域の文化、慣習、市場、読者に合わせて調整することを指します。
たとえば、日本企業のWebサイトでは、
「安心・安全を第一に」「きめ細かな対応」「お客様に寄り添うサービス」
といった表現がよく使われます。
これらを英語に訳すこと自体は難しくありません。
しかし、英語として正しく翻訳されていても、それだけで海外の読者に日本語と同じ印象を与えられるとは限りません。
市場によっては、
「具体的に何ができるのか」「他社と何が違うのか」「どのような実績があるのか」
といった情報を、より明確に示した方が伝わりやすい場合があります。
つまり、原文の内容を正確に別の言語へ移すことが「翻訳」だとすれば、伝える相手や使用する市場に合わせて内容や表現を最適化することが「ローカリゼーション」です。
すべての文章をローカライズすればよいわけではない
ここで注意したいのは、ローカリゼーションをすればするほど良いわけではない、という点です。
文書の種類や使用目的によって、求められる対応は大きく異なります。
契約書・規程などの法務関連文書
契約書や規約、社内規程などでは、原文の意味を正確に維持することが最優先です。
読みやすくするために意訳しすぎたり、文化的に自然な表現へ自由に変更したりすると、原文との意味のずれが生じる可能性があります。
このような文書では、「自然な文章であること」だけではなく、原文との意味の対応関係が保たれていることが重要になります。
技術文書・マニュアル
技術文書やマニュアルでは、専門用語の正確性と統一が重要です。
同じ部品や機能をページごとに異なる訳語で表現すると、読み手が混乱する原因になります。
そのため、用語集や過去の翻訳、既存の製品資料などを確認しながら、表現を統一していく必要があります。
Webサイト・会社案内
Webサイトや会社案内では、意味の正確さだけでなく、「読んだ人にどう伝わるか」が重要になります。
日本語では自然でも、英語では曖昧に感じられる表現もあります。
企業の強み、実績、サービス内容などを、ターゲットとなる海外の読者が理解しやすい形へ整理する必要があります。
広告・マーケティング
広告やマーケティングでは、さらに柔軟な対応が求められます。
キャッチコピーをそのまま直訳しても、同じ印象や感情を生み出せるとは限りません。
場合によっては、原文の言葉そのものではなく、「そのコピーが何を伝えようとしているのか」を理解したうえで、別の表現に再構成する必要があります。
海外向けコンテンツで起きやすい問題
海外向けの資料やWebサイトでは、単純な言語変換だけでは処理しにくいポイントが数多くあります。
主語が省略されている
日本語では、主語を省略しても意味が通じることが多くあります。
しかし、英語では主語を明確にする必要があります。
そのため、翻訳する際に文脈を理解し、「誰が何をするのか」を判断しなければならない場面があります。
原文が曖昧な場合、翻訳者だけでは判断できず、発注企業への確認が必要になることもあります。
翻訳には、相手の国の「常識」を理解することも必要
翻訳では、単語や文法を理解するだけでは十分ではありません。
その文章を読む人がいる国や地域の文化、制度、商習慣、役職体系、業界慣行などを理解していなければ、言葉としては正しくても、実際には誤解を招く翻訳になることがあります。
たとえば、日本の「株式会社」「代表取締役」「一般社団法人」などは、海外にまったく同じ制度や役職が存在するとは限りません。
逆に、海外の役職名を日本語に訳す場合にも注意が必要です。
米国企業でよく使われる「Vice President」は、その代表的な例です。
これを機械的に「副社長」と訳すと、実際の役職階層とは大きく異なる場合があります。米国企業では、Vice Presidentが特定部門の責任者などを示す役職として使われ、企業によっては多数のVice Presidentが存在することもあります。
そのため、適切に翻訳するには、役職名そのものだけでなく、その企業の組織構造や、その人物の職務、現地でその役職がどのように位置づけられているのかまで確認する必要があります。
これは役職名に限りません。
契約、雇用、営業、広告、金融、不動産など、ビジネスのさまざまな場面で、国によって「当たり前」は異なります。
つまり翻訳には、原文の言語を理解する力だけでなく、翻訳を読む側の国で、その言葉がどのように受け取られるのかを理解する力も必要なのです。
日付や数字の表記が異なる
日本では「2026年9月4日」と書けば、通常は誤解がありません。
しかし、数字だけで「9/4/2026」と書いた場合、国や地域によって9月4日とも4月9日とも解釈される可能性があります。
これは国や地域によって異なる場合もあります。
通貨、単位、電話番号、住所などにも同じような問題があります。
日本語では自然でも、海外では抽象的に見える
日本企業のWebサイトでは、
法人で継続的な翻訳や専門分野の翻訳が必要な場合は、アシーマの法人向け翻訳・ローカリゼーションサービスもご確認いただけます。
「高品質なサービスを提供します」「お客様のニーズに対応します」「豊富な実績があります」
といった表現がよく使われます。
もちろん間違った表現ではありません。
しかし、海外向けでは、
どのような品質なのか。どのようなニーズに対応できるのか。どのような実績があるのか。
まで具体的に示した方が、説得力が高まる場合があります。
ここで必要になるのが、直訳ではなく、ターゲット市場を意識した情報設計です。
翻訳を発注しても、社内でチェックできない問題
企業が翻訳を行うとき、見落とされやすい問題があります。
それが、「完成した翻訳を誰が評価するのか」という問題です。
翻訳会社や外部の翻訳者に依頼した場合だけでなく、社内の外国語ができる担当者が翻訳した場合でも、その内容を適切にチェックできる人がいなければ、同じ問題が起こります。
翻訳を必要としている企業のすべてに、十分な語学力があり、なおかつ対象言語が使われる国や地域の文化、制度、商習慣まで理解している担当者がいるわけではありません。
そのため、
翻訳が正しいのか分からない
不自然な表現があっても気づけない
現地では違和感のある表現かどうか判断できない
翻訳会社や翻訳担当者からの質問にどう回答すればよいか分からない
修正が必要でも、どこをどう直すべきか判断できない
社内の担当者ごとに判断基準が異なる
といったことが起こります。
さらに、複数の翻訳会社や翻訳者、社内担当者が翻訳に関わっている企業では、
「同じ言葉なのに毎回訳し方が違う」
「部署によって用語が統一されていない」
「過去の翻訳がどこにあるのか分からない」といった問題も生じます。
翻訳を誰が担当するかにかかわらず、翻訳しただけではこうした課題は必ずしも解決しません。
むしろ必要なのは、翻訳の準備から実施、品質確認、修正、用語管理までを一つのプロジェクトとして管理することです。
翻訳ディレクションという考え方
そこで役立つのが、翻訳ディレクションです。
翻訳ディレクションとは、単に文章を翻訳するのではなく、発注企業と翻訳者・翻訳会社の間に立ち、翻訳プロジェクト全体を管理する役割です。
たとえば、
翻訳する資料の整理
翻訳会社・翻訳者への指示
原文に関する質問の整理
用語集やスタイルガイドの作成
訳語の統一
翻訳品質の確認
修正指示
納品物の管理
過去の翻訳資産の整理
などがあります。
企業側に語学力の高い担当者がいなくても、こうしたディレクションを外部に委託することで、翻訳プロジェクトを管理しやすくなります。
いわば、社外に「翻訳・多言語業務の担当者」を置くような考え方です。
AI翻訳時代だからこそ、翻訳管理が重要になる
現在は、生成AIや機械翻訳の性能が大きく向上しています。
内容を素早く把握したり、大量の文章を短時間で処理したりする場面では、非常に便利なツールです。
企業の翻訳業務でも、AIを活用できる場面は今後さらに増えていくでしょう。
しかし、「AIで翻訳できる」ことと、「企業として安心して使用できる翻訳になっている」ことは同じではありません。
たとえば、
この文章はAI翻訳で十分なのか
人間の翻訳者に依頼すべき文書なのか
AIで下訳を作り、人間がレビューすべきなのか
契約書や機密文書をAIに入力してよいのか
AIが作った翻訳の正確性を誰が確認するのか
過去の訳語や企業独自の用語と統一されているか
といった判断が必要になります。
AIを導入すれば翻訳管理が不要になるわけではありません。
むしろ、さまざまな翻訳手段を使えるようになったからこそ、「どの文書に、どの方法を使うのか」を判断する役割が重要になります。
翻訳を依頼するときに伝えておきたいこと
翻訳の品質を高めるためには、原稿だけを渡すのではなく、背景情報も共有することが重要です。
たとえば、
誰が読むのか
どの国や地域で使うのか
Webサイトなのか、契約書なのか、営業資料なのか
どの程度原文に忠実な翻訳が必要なのか
既存の用語集や過去の翻訳があるか
ブランドとして統一したい表現があるか
社内で最終確認を行う人がいるか
といった情報です。
同じ文章でも、使用目的が違えば最適な訳し方は変わります。
翻訳者が「この文章がどこで、誰に、何のために使われるのか」を理解できるほど、完成する文章の精度も高くなります。
海外向けコンテンツは「翻訳する前」も重要
海外向けコンテンツを作成するとき、多くの企業が翻訳作業そのものに注目します。
しかし実際には、その前段階も非常に重要です。
原文が曖昧であれば、どれだけ優秀な翻訳者が担当しても、翻訳後の文章も曖昧になります。
逆に、日本語の段階で、
誰に何を伝えたいのか。何を最も強調したいのか。どこまで説明する必要があるのか。
が整理されていれば、海外向けの文章も作りやすくなります。
また、そもそもすべての資料を翻訳する必要があるとは限りません。
どの情報を翻訳すべきか、どの資料を優先するか、どこまでローカライズするか。
こうした判断も、海外向け情報発信の重要な一部です。
翻訳とは、完成した日本語を別の言語へ置き換えるだけの作業ではありません。
海外の相手に情報を正確に届けるためのコミュニケーション設計の一部と考えることができます。
翻訳業務そのものを見直すという選択肢
翻訳案件が増えてくると、その都度翻訳会社を探して発注するだけでは、管理が難しくなっていきます。
どの会社に何を依頼したのか。どの訳語を採用したのか。誰が品質を確認したのか。過去の翻訳を次回どのように活用するのか。
こうした情報が整理されていなければ、毎回同じ確認作業を繰り返すことになります。
そのため、一定量の翻訳需要がある企業では、
翻訳発注のルールを決める
AI翻訳を使える範囲を定める
用語集を作成する
翻訳会社や翻訳者の役割を整理する
品質チェックの基準を作る
過去の翻訳資産を管理する
といった「翻訳業務そのものの設計」が必要になる場合があります。
これは翻訳ではなく、翻訳・多言語運用に関するコンサルティングの領域です。
株式会社アシーマの翻訳・ローカリゼーション
株式会社アシーマでは、企業向けの翻訳・ローカリゼーションに対応しています。
契約書、規程、マニュアル、企業資料、Webサイト、マーケティングコンテンツなど、文書の目的や用途に応じて、正確性と自然さのバランスを考えながら対応します。
また、翻訳そのものだけではなく、
翻訳プロジェクトのディレクション
翻訳品質のチェック・レビュー
翻訳会社・翻訳者とのコミュニケーション支援
用語・表現の統一
多言語コンテンツの運用支援
AI翻訳を含む翻訳業務の活用方法に関するご相談
などにも対応しています。
「翻訳を依頼したい」という段階だけでなく、
「社内に外国語が分かる担当者がおらず、翻訳の良し悪しを判断できない」
「翻訳会社とのやり取りを含めて任せたい」
「会社全体の翻訳業務をどう管理すればよいか分からない」
という段階からご相談いただけます。
翻訳・ローカリゼーション・翻訳ディレクションをご検討の方へ
企業の多言語対応で必要なのは、必ずしも「翻訳を発注すること」だけではありません。
翻訳するべき内容を整理し、適切な翻訳方法を選び、品質を確認し、継続的に管理する。
そこまで含めて設計することで、海外とのコミュニケーションはより安定します。
株式会社アシーマでは、翻訳・ローカリゼーションから翻訳プロジェクトのディレクション、翻訳・多言語運用に関するコンサルティングまで、企業の状況に応じてサポートしています。
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