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3I/ATLAS、近日点通過後も「尾なし」──非重力加速度の謎が深まる

恒星間天体3I/ATLASの近日点通過後の画像
2025年11月5日にスペインのR. Naves天文台で撮影された、恒星間天体3I/ATLASの近日点通過後の画像。ぼんやりとした光の球体が写っており、左下方向が太陽の方向(左側の矢印は太陽と反対方向を示す)。 明確な彗星の尾は確認されない。 (クレジット:R. Naves Observatory, スペイン)




3I/ATLAS、近日点通過後も「尾なし」──非重力加速度の謎が深まる


2025年11月5日、スペインのR. Naves天文台およびVirtual Telescope Projectが撮影した3I/ATLAS(アトラス)近日点通過後の最新画像が公開されました。


画像には、ぼんやりとした光の球体が写っていますが、彗星の特徴である明確な尾は確認されていません。


NASA/JPLが報告しているように、3I/ATLASは近日点で次のような非重力加速度を示していました:

  • 太陽から外向き:1.1×10⁻⁶ au/日²

  • 太陽方向に対して横方向:3.7×10⁻⁷ au/日²


この数値は、典型的な彗星活動であれば大量のガスと塵を噴出しているはずの強さです。しかし実際の画像では、尾が存在しない──つまり大規模な質量放出の痕跡がないことが明らかになりました。


Virtual Telescope Projectによる3I/ATLASの近日点通過後の画像
2025年11月5日にVirtual Telescope Projectによって報告された、3I/ATLASの近日点通過後の画像。(クレジット:The Virtual Telescope Project)

想定される「質量損失」と観測結果の矛盾


ローブ博士によると、運動量保存の法則に基づく計算では、3I/ATLASは近日点通過時に全体質量の13%以上を失ったと推定されています。このような規模の質量放出があれば、通常は明るく長い尾が形成されるはずです。

しかし、最新の11月5日の観測ではそれが見られず、同じ望遠鏡が同日に撮影した太陽系彗星レモン(Comet Lemmon)では典型的な尾が明瞭に確認されました。



太陽系内の彗星レモン(Lemmon)の画像
2025年11月3日にスペインのR. Naves天文台で撮影された、太陽系内の彗星レモン(Lemmon)の画像。 太陽とは反対方向に、はっきりとした彗星の尾が確認できる。 (クレジット:R. Naves Observatory, スペイン)


増え続ける“異常”リスト


3I/ATLASがこれまでに示した異常は、以下の10項目に及びます:

  1. 逆行軌道が黄道面と5度以内で整列(確率0.2%)

  2. 7〜8月に太陽方向への「逆尾(anti-tail)」を噴出

  3. 核がオウムアムアの100万倍の質量(確率0.1%未満)

  4. 火星・金星・木星への接近タイミングが“設計的”精度(確率0.005%)

  5. ガス中のニッケル/鉄比が工業合金並みに高い(確率1%未満)

  6. 水の質量比が4%と極端に低い

  7. 前例のない強い負偏光を示す

  8. 飛来方向が「Wow! Signal」と9度以内で一致(確率0.6%)

  9. 近日点で異常な増光と“太陽より青い色”を示す

  10. 非重力加速度があるにもかかわらず尾が存在しない


これらの異常が自然な彗星の範疇に収まるのか、それとも人工的要因による推進システムの可能性を示すのか──議論は続いています。



南米から届いた声:「科学への情熱を取り戻してくれた」


ローブ博士は記事の末尾で、チリの首都サンティアゴ在住の電気技師ダリオ・ビリャロン氏からのメールを紹介しています。

「先生の研究は、天文学だけでなく多くの人々に“科学への情熱”を呼び覚ましています。私の18歳の娘も先生の投稿に触れ、進路を天文学へと変えました。どうか批判に屈せず、研究を続けてください。」

3I/ATLASをめぐる観測は、単なる天文学上の話題にとどまりません。


それは「私たちが宇宙をどのように理解し、何を“未知”とみなすか」という、人類の知的姿勢そのものを問うものです。データの公開を求める声、異論を恐れず仮説を立てる科学者たち、そして世界中でこの出来事を見守る市民──そのすべてが、科学を“生きた探究”として前進させています。


私たちアシーマは、言葉の壁を越えてこうした知の流れをつなぎ、世界の最前線で生まれる発見を、正確かつ情熱的に伝えていきたいと考えています。


次に明らかになる3I/ATLASの真実を、これからも共に追いかけていきましょう。




株式会社アシーマ

株式会社アシーマより


科学的探究の精神は、言語や国境を越えて共有されるものです。株式会社アシーマ(Acima Corporation)は、こうした国際的科学論文や発見を、正確かつわかりやすい日本語で届ける翻訳専門チームです。英語・日本語の両方向での技術翻訳、科学報道翻訳についてはお気軽にご相談ください。


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