法人向け通訳の料金相場と見積もりの見方|同時通訳・逐次通訳の費用を解説
通訳を初めて外注するとき、多くの担当者が最初に戸惑うのが「結局、いくらかかるのか分からない」という点です。通訳料金は、単純な時給だけでは決まりません。同時通訳か逐次通訳か、拘束時間、必要人数、専門分野、使用言語、オンラインか現地か、さらに同時通訳機材の有無によって総額が大きく変わります。
そこで本記事では、法人が通訳を発注するときに知っておきたい料金の考え方を、実際の見積もり項目まで含めて整理します。単に「相場はいくらか」を示すだけではなく、なぜその金額になるのか、どの項目を確認すれば適正な見積もりか判断できるのかまで解説します。

通訳料金は「通訳者1名の単価」だけでは決まらない
通訳の見積もりを見るとき、まず理解しておきたいのは、表示されている「半日料金」「1日料金」が必ずしも案件全体の総額ではないことです。実際の総額は、通訳者の人数、拘束時間、通訳形式、機材、交通費・出張費、事前準備などを組み合わせて決まります。
たとえば同時通訳は、高い集中力を長時間維持する必要があるため、一般に複数名の通訳者が交代して対応します。アイ・エス・エスは同時通訳について、半日で2~3名、終日で3~4名を必要人数の目安として案内しています。一方、逐次通訳は短時間であれば1名で対応できるケースがあります。
つまり「同時通訳の1名単価」と「逐次通訳の1名単価」だけを比較しても、案件全体の費用差は分かりません。法人の発注担当者が見るべきなのは、
何名体制なのか
何時間拘束するのか
機材や配信環境が必要か
事前準備や資料確認をどこまで含むか
交通費・出張費・延長料金が別途発生するか
という「総額の構造」です。
法人向け通訳の料金相場はどのくらいか
現在公開されている主要通訳会社の料金を見ると、プロ通訳の料金にはかなり幅があります。サイマル・インターナショナルは、日英を含む通訳料金として、一般クラス1名の半日(3時間以内)を34,000円、1日を50,000円、Bクラスを半日57,000円・1日85,000円、Aクラスを半日74,000円・1日110,000円と公表しています。医薬など特定分野のSクラスでは半日88,000円・1日130,000円です。
また、インターグループが2026年8月に更新した料金解説では、1日料金の目安として、Bクラス3~6万円、Aクラス5~8万円、Sクラス9~12万円という例が示されています。会社ごとにクラス分けや条件は異なるため単純比較はできませんが、専門性や経験、案件の重要度によって料金帯が上がる点は共通しています。
一方、日本翻訳連盟(JTF)が公表した業界調査では、当時の1日平均価格帯について、同時通訳では「10万円未満」が67.3%、逐次通訳では「6万円未満」が60.7%という結果が示されていました。ただしこれは2017年度調査の結果であり、現在の発注価格をそのまま示すものではありません。現在の料金を判断するときは、直近の各社公表価格や実際の見積もりを併せて見る必要があります。
逐次通訳と同時通訳で料金が変わる理由
逐次通訳の場合
逐次通訳では、話者がある程度話したところで一度止まり、通訳者がその内容を訳します。少人数の商談、社内会議、インタビュー、工場・施設視察などに向いています。
比較的短時間の案件では1名で対応できることがあり、専用機材も不要なケースが多いため、同時通訳より総額を抑えやすい傾向があります。ただし、話者と通訳者が交互に話すため、会議時間は長くなります。1時間の内容を扱うつもりでも、実際にはより長い時間枠を確保する必要があることがあります。
形式の違いを詳しく知りたい方は、同時通訳・逐次通訳・ウィスパリング通訳の違いもあわせてご覧ください。
同時通訳の場合
同時通訳では、話者の発言を聞きながらほぼ同時に訳出します。大規模会議、国際会議、全社会議、シンポジウム、講演会など、会議を止めずに進行したい場面に適しています。
ただし、通訳者への負荷が高いため複数名体制になることが多く、さらに会場型では通訳ブース、マイク、送信機、受信機などの機材費が加わることがあります。そのため、同じ3時間の案件でも逐次通訳より総額が大きくなることがあります。
国際会議で同時通訳を利用する場合の準備については、国際会議の同時通訳を成功させる準備で実務面を詳しく解説しています。
オンライン通訳なら必ず安くなるわけではない
ZoomやTeamsなどを使うオンライン通訳では、通訳者の移動費や一部の会場機材費を削減できる可能性があります。しかし、「オンラインだから通訳者1名でよい」「準備が不要になる」というわけではありません。
特にオンライン同時通訳では、通訳者の人数に加えて、使用するプラットフォーム、通訳チャンネル、音声品質、参加人数、技術サポートの有無などが費用に影響します。遠隔同時通訳専用システムを使う場合はシステム利用料が加わることもあります。
つまり、オンライン化で削減できるのは主として「移動・会場・物理機材」の一部であり、専門通訳者そのものの価値が大きく下がるわけではありません。
見積もり金額を左右する7つの要素
1.通訳形式
逐次通訳、同時通訳、ウィスパリング通訳のどれを選ぶかで、必要人数や機材構成が変わります。
2.拘束時間
通訳料金は実働時間ではなく「拘束時間」で計算されることがあります。たとえばアイ・エス・エスでは、案件ごとの契約について、昼12~13時をまたがない4時間までを半日、4時間を超え休憩1時間を含む8時間までを終日料金と案内しています。会議自体が2時間でも、集合時間や待機を含めると料金区分が変わる場合があります。
3.必要人数
同時通訳は交代要員を含めて複数名になることが一般的です。長時間の逐次通訳でも複数名体制になる場合があります。
4.専門分野
医療、法務、IT、金融、技術、IR、経営会議などでは、単に語学力が高いだけでなく、その分野の用語や会議運営に慣れた通訳者が必要です。重要な会議ほど「一番安い人」よりも「その案件に合う人」を選ぶ意味が大きくなります。
5.言語
英語以外の言語では、地域や専門分野によって対応できる通訳者の人数が限られることがあります。希少言語や複数言語の会議では、手配条件が料金に反映される場合があります。
6.機材・配信環境
同時通訳ブース、受信機、マイク、音響、オンライン配信システム、技術スタッフなどが必要になると、通訳者料金以外の費用が増えます。
7.交通費・出張費・延長・キャンセル条件
遠方への移動、前泊・後泊、早朝・深夜対応、予定時間の延長などは別料金になることがあります。また、通訳者を確保した後の日時変更やキャンセルにはキャンセル料が発生する場合があります。見積もり時点で確認しておくことが重要です。
通訳の見積書で必ず確認したい項目
見積書を受け取ったら、総額だけを見るのではなく、少なくとも次の項目を確認してください。
通訳者の人数
半日・終日などの拘束時間区分
逐次・同時・ウィスパリングなどの通訳形式
延長料金の計算方法
交通費・宿泊費・出張費の扱い
同時通訳機材や配信システムの料金
技術スタッフの有無
事前打ち合わせや資料確認の扱い
キャンセル・日程変更の条件
消費税を含むかどうか
特に複数社を比較する場合は、A社の見積もりには機材費が含まれ、B社には含まれていない、といった条件差に注意が必要です。総額だけを横に並べると、実際には同じ条件で比較できていないことがあります。
安い見積もりが必ずしも得とは限らない
通訳は、会議が終わった後に「やり直す」ことが難しいサービスです。契約交渉、役員会議、海外企業との重要商談、記者会見、国際会議などでは、誤解が生じたときの損失が通訳料金の差額を大きく上回ることがあります。
だからといって、常に最高クラスの通訳者を手配すればよいわけでもありません。社内の短い打ち合わせに国際会議クラスの体制を組めば、費用対効果は悪くなります。重要なのは、案件の目的とリスクに合った通訳者・通訳形式・体制を選ぶことです。
通訳会社を比較するときのチェックポイントについては、法人が通訳会社を選ぶ際に確認すべき7つのポイントも参考になります。
見積もりを正確にするため、依頼時に伝えるべき情報
見積もりを依頼するときは、最初から次の情報を伝えておくと、後から金額が大きく変わるリスクを減らせます。
日時と予定拘束時間
開催場所またはオンライン会議の使用システム
必要言語と言語方向(日→英、英→日、双方向など)
参加人数
会議の目的・テーマ
希望する通訳形式(分からなければ相談で可)
専門分野
登壇者・発言者の人数
同時通訳機材の有無
事前資料を提供できる時期
「英語通訳を3時間お願いします」だけでは、最適な体制も正確な料金も判断できません。逆に、会議の目的と条件が具体的であれば、過剰な体制を避けながら必要な品質を確保しやすくなります。
法人向け通訳は「価格」ではなく「総コスト」で考える
通訳料金を見るときに重要なのは、1名あたりの金額をできるだけ下げることではありません。会議時間、参加者数、重要度、専門性、機材、準備負担まで含めて、目的を達成するための総コストを考えることです。
たとえば逐次通訳の方が通訳者費用を抑えられても、会議時間が長くなり、海外から参加する役員や多数の社員の拘束時間が増えれば、会社全体のコストはむしろ高くなる可能性があります。逆に、少人数の商談に大規模な同時通訳設備を組む必要はありません。
通訳は「どの形式が一番高品質か」ではなく、「その場面に何が最適か」で考えるべきサービスです。
アシーマの法人向け通訳サービス
アシーマでは、商談、社内会議、研修、イベント、国際会議、オンライン会議など、目的に応じて逐次通訳・同時通訳・オンライン通訳をご提案しています。
案件内容がまだ固まっていない段階でも、日時、場所、言語、参加人数、会議内容などが分かれば、必要な通訳形式や人数を整理できます。
料金を含めて具体的に相談したい場合は、法人向け通訳サービスをご覧ください。
参考情報
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