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【徹底解説】欧州司法裁判所「飛行機で預けたペットは手荷物扱い」判決──日本の航空会社との比較から見える課題と未来

  • Y.S.
  • 10月23日
  • 読了時間: 6分
アシーマのイチローです。
アシーマの看板犬 イチローです。

2025年10月、欧州司法裁判所(CJEU)は、「飛行機に預けられたペットは『預入手荷物(checked baggage)』と見なされる」との判断を示しました。この判決は、ペットを「家族」と捉える現代社会に大きな波紋を広げています。


本記事では、判決の背景と意味を解説するとともに、日本の主要航空会社である日本航空(JAL)全日本空輸(ANA)の対応を比較し、今後の課題と展望を考察します。



判決の発端──貨物室に預けられた犬の行方不明事件


事件は、アルゼンチンのブエノスアイレスからスペイン・バルセロナへ向かう国際便で発生しました。飼い主が愛犬を貨物室に預けたところ、到着後に犬が見つからなくなったのです。

飼い主は「家族を失った」として5,000ユーロ(約80万円)の損害賠償を請求しましたが、航空会社は「ペットは手荷物の一部に過ぎない」と反論。訴訟は長期化し、最終的に欧州司法裁判所が「ペットは法律上、手荷物に分類される」との判断を下しました。



判決の根拠:「モントリオール条約」による責任上限


欧州司法裁判所の判断は、国際航空運送の基礎法とされる「モントリオール条約」に基づいています。同条約では、航空会社の責任を明確に定めており、手荷物の損害については1,288SDR(約25万円)を上限としています。

このため、ペットが行方不明になった場合でも、航空会社の賠償責任は手荷物と同じ上限が適用されることになります。

ただし、飼い主が出発前に「運送利益の特別申告(special declaration of interest)」を行い、追加料金を支払えば、より高い補償を受けられる可能性があります。しかし本件では、この申告がなされていなかったため、高額請求は退けられました。



飛行機で預けたペットは「手荷物扱い」なのに追加料金──矛盾する料金体系


今回の判決で多くの人が疑問を抱いたのは、ペット輸送の料金と法的扱いの不整合です。

航空会社は、ペットを貨物室に預ける場合や機内同伴する場合に、通常の手荷物とは別に「ペット運搬費」を徴収します。たとえば、国際線では数万円から十数万円、国内線でも1回あたり数千円から7,000円ほどが一般的です。

この費用には、以下のような要素が含まれていると説明されています。

  • クレート(輸送用ケージ)の管理・積み下ろし作業

  • 貨物室の温度・気圧調整コスト

  • 動物の健康や安全を確保するための人員対応

しかし、**「手荷物扱いで責任上限は25万円」という法的位置づけと、「特別料金の徴収」**という現実は明らかに整合していません。

つまり、今回の判決は「ペットを手荷物と見なす法体系」と「実際には特別扱いで料金を取る商慣行」の間にある、制度的ギャップを浮かび上がらせたと言えます。



🐾 クレートが開いた理由──責任の所在をめぐる疑問


事件の焦点のひとつは、「なぜ飛行機で預けたペットが入っているクレート(輸送用ケージ)が開いてしまったのか」という点でした。貨物室内で自然に扉が開くことは通常あり得ず、積み込みの際の固定ミス、または取り扱い時の不備が疑われます。

このようなケースでは、「航空会社が徴収したペット運搬費は安全管理に充てられているのか」という点も問われます。もし追加料金を取っているにもかかわらず、基本的な管理が不十分であったとすれば、ペット料金の存在意義そのものが問われることになります。



ソース:




では、日本の航空会社はどのような基準でペット輸送を行っているのでしょうか。ここでは、国内2大キャリアである**日本航空(JAL)全日本空輸(ANA)**の対応を比較します。


🟥 日本航空(JAL)

JALでは、犬・猫・小鳥・ウサギ・フェレットなどを対象にした「ペット輸送サービス」を提供しています。基本的にペットは貨物室で預かる形式で、**客室内への同伴は原則不可(補助犬を除く)**です。

  • 国内線:1クレートあたり 5,500〜7,700円(税込)

  • 国際線:体重・航路・便種別で変動(例:20,000円以上)

  • 使用できるケージはIATA基準に準拠したもの

  • 短頭種(ブルドッグ、フレンチブルドッグなど)は安全上、輸送不可

  • 出発2時間前までにチェックインが必要

さらにJALは、貨物室内の温度や換気管理に注意を払っており、「安心してお預けいただける環境」を強調しています。ただし、輸送中の事故や死亡時の補償額は明示されていません。


🟦 全日本空輸(ANA)

ANAでも同様に、犬・猫・小鳥・ウサギ・フェレットなどの輸送を受け付けています。ANAの場合も貨物室での預かりが基本で、機内同伴は補助犬を除き認められていません。

  • クレート+ペットの合計重量は100kg以内

  • IATA準拠の頑丈なケージが必要

  • 妊娠中・4ヶ月未満・心呼吸器疾患のあるペットは不可

  • 費用は国内線で約1万円前後、国際線では数万円

ANAは、貨物室内の気圧・温度・明るさなどを管理し、スタッフによるチェック体制を明示していますが、こちらも補償金額や賠償の明確な基準は公表されていません。



📊 比較表:JALとANAの主要項目


項目

日本航空(JAL)

全日本空輸(ANA)

機内同伴

原則不可(補助犬のみ)

原則不可(補助犬のみ)

輸送方法

貨物室(預入手荷物扱い)

貨物室(預入手荷物扱い)

国内線料金

5,500〜7,700円

約1万円前後

国際線料金

2〜5万円程度

2〜6万円程度

ケージ条件

IATA基準

IATA基準・重量100kg以内

制限犬種

短頭種は不可

短頭種は不可

補償上限

非公開(手荷物扱いの可能性)

非公開(同上)

欧州判決との接点:共通の課題と曖昧さ


欧州の判決と日本の現状には、いくつかの共通点と課題が見られます。

  1. ペットは法的に「手荷物」扱いである点 JAL・ANAとも、ペットを「受託手荷物」として処理しており、法的位置づけは欧州とほぼ同様です。

  2. 料金は特別扱いだが、補償は手荷物水準の可能性 高額な「運搬費」が課されているにもかかわらず、万一の補償は明確に示されていません。

  3. 補償と責任の透明性不足 欧州では判例によって責任上限が明文化された一方、日本では“慣行”にとどまっています。 実際にペットが亡くなったケースでの賠償は、個別交渉に依存しているのが実情です。



飼い主が取るべきリスク対策


国際・国内を問わず、飼い主ができる現実的な対策は次の通りです。

  • 出発前に航空会社のペットポリシーを必ず確認

  • 「特別申告」やペット保険による補償強化を検討

  • IATA基準のクレートを用い、扉のロックを二重に固定

  • 夏季や冬季など、貨物室の温度変化が激しい時期を避ける

  • 可能な限り直行便を選ぶことでリスクを軽減

  • 搭乗前に健康診断書・ワクチン証明書を準備

これらは一見当たり前のようですが、実際には守られていないケースも多く、「事前準備が生死を分ける」ことさえあります。



今後の展望:料金と責任のバランスをどう取るか


欧州司法裁判所の判決は、「法律」と「感情」のズレを明確にしました。ペットは家族でありながら、法律上は「物」として扱われています。

同様に日本でも、運搬費を支払いながら補償が限定される構造は、倫理的な再検討を求められる段階にあります。今後は、

  • ペット運搬費の使途の透明化

  • 補償範囲・上限の明示

  • 航空会社・動物福祉団体・行政の連携強化が求められるでしょう。



結論:ペットの命を「手荷物」にしない社会へ


今回の判決は、航空輸送の現場における「命の扱い」を問い直すきっかけになりました。ペットを“貨物”として分類する制度をどう改善していくかは、航空会社だけでなく社会全体の課題です。

飼い主は備えを、航空会社は責任を、そして司法は制度をそれぞれの立場から「命を運ぶ仕組み」を考え直すことが、これからの空の旅に求められています。


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