3I/ATLASに乗って、星々へ
- ACIMA WORLD NEWS 編集部

- 2025年12月22日
- 読了時間: 5分
―― 恒星間天体がもたらす「最速の宇宙メッセージ」という発想
執筆:ACIMA WORLD NEWS 編集部

人類は、宇宙に向けて「瓶に入れた手紙」を投げ続けてきました。
その象徴が、NASAの探査機 ボイジャー1号・2号に搭載されたゴールデンレコードです。そこには、地球の音楽、映像、言語、メッセージが収められ、いつか知的生命体が発見するかもしれない“人類の痕跡”として、今も太陽系の外へ向かって航行を続けています。
ハーバード大学の天体物理学者 アヴィ・ローブ博士は、新たな論考Riding 3I/ATLAS to the Stars において、この「宇宙へのメッセージ」という発想を、さらに大胆に拡張します。
ボイジャーは、あまりにも遅いのかもしれません
ボイジャー1号は、1977年9月5日に打ち上げられました。奇しくもその直後、地球外知的生命の可能性を示す Wow! シグナル が観測されています。
現在のボイジャー1号の速度は、秒速 17km。太陽からの距離は約 170天文単位(AU) に達しています。
しかし、恒星間空間の本当の入口とされるオールト雲の外縁(約10万AU) に到達するには、およそ2万8,000年 かかると見積もられています。
これは、人類の歴史から見ても、あまりに長い時間です。
3I/ATLASという「高速列車」
ここでローブ氏が注目するのが、恒星間天体 3I/ATLAS です。
この天体は、太陽系を離脱する際の速度が秒速約60km に達すると推定されています。
その結果、
ボイジャー:恒星間空間への本格的帰還まで 約28,000年
3I/ATLAS:恒星間空間への帰還まで 約8,000年
という大きな差が生まれます。
言い換えれば、3I/ATLASに「乗る」ことができれば、人類は約2万年分の時間を短縮できるという発想です。
ローブ氏は、これを単なる空想ではなく、技術的に検討する価値のある選択肢として提示しています。
恒星間天体は「メッセージの運び屋」になり得るか
過去10年で、恒星間天体の発見は現実的な研究分野となりました。それは同時に、新たな可能性を開きます。
ローブ氏が挙げる案は、主に2つです。
1. 恒星間天体に「ゴールデンレコード」を残す
3I/ATLASのような大型の恒星間天体に接近する迎撃ミッションを設計し、その表面に、人類の情報を刻んだ記録媒体を設置する。
それは、未来の「恒星間考古学者」に向けた遺産となるかもしれません。
2. レーザーで直接メッセージを刻む
高出力レーザーを用いて、恒星間小惑星の乾燥した表面に情報を刻印するという方法です。
誰にも見られなければ、意味はないのでしょうか
ここでローブ氏は、哲学的な問いを投げかけます。
誰もいない森で木が倒れたとき、それは「音を立てた」と言えるのでしょうか。
恒星間天体に刻まれたメッセージも、誰にも気づかれなければ無意味なのではないか、という疑問です。
現実的な制約もあります。
現在の地上・宇宙望遠鏡では、マンハッタン島ほどの大きさの文字でさえ、地球—太陽間距離程度では分解できません。
しかし、もしそのような「看板」が 0.1AU以内 に現れたなら、大学には新しい学問分野が誕生するでしょう。
「恒星間考古学(Interstellar Archaeology)」 です。
芸術だけでなく、実用の痕跡かもしれません
ローブ氏は、技術的痕跡が必ずしも芸術的メッセージとは限らない点にも言及します。
それらは、
鉱物資源の採掘
燃料の取得
恒星間航行のための補給
といった、実用目的のインフラである可能性もあります。
将来、ESAの Comet Interceptor のような迎撃ミッションが、恒星間天体に接近し、表面の詳細画像や分光データを取得する日が来るかもしれません。
また、ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡による分光観測で、
人工照明
内部熱源による赤外線過剰
といった兆候が検出される可能性もあります。
3I/ATLASに「ヒッチハイク」するという夢
ローブ氏は、ややユーモラスにこう締めくくります。
もし機会があったなら、3I/ATLASに乗って、自身の遺灰を恒星間空間へ運んでもらいたかった、と。
3I/ATLASやボイジャーが、天の川銀河の反対側に到達するまでには、約10億年 かかります。
しかし、多くの恒星は太陽よりも数十億年早く誕生しています。そこに文明が存在したなら、私たちの裏庭に到達する時間は、十分にあったはずです。
彼らの「ゴールデンレコード」や、最も野心的な探検者の痕跡が、今も恒星間天体の中に眠っている可能性は、決して否定できません。
編集部まとめ
―― 恒星間天体は、未来への近道かもしれません
3I/ATLASは、ただ通過する天体ではありません。それは、時間を短縮し、視野を拡張する乗り物としての可能性を示しています。
宇宙に何かを残すこと。それが誰かに見つかるかどうかは分かりません。
それでも、人類が宇宙に向けて手を伸ばす行為そのものが、文明の成熟を示す証なのかもしれません。




光速の五千分の一でしかなく、3I/ATLASだって恒星間飛行には遅すぎて乗り物には不適当。何一つ証拠のない知的生命体の関与説にいつまでも縛られるのは、科学ではなくSFの領域。天文学としては彗星の起源の恒星系の組成や、彗星を恒星間にまき散らす力学などを研究するほうが、よほど意味があると思われる。