top of page

3I/ATLASに乗って、星々へ

―― 恒星間天体がもたらす「最速の宇宙メッセージ」という発想


執筆:ACIMA WORLD NEWS 編集部


025年12月19日に撮影された恒星間天体 3I/ATLAS の画像解析。
2025年12月19日の地球最接近時に撮影された恒星間天体 3I/ATLAS の画像解析。 上段は、異なる波長帯における輝度分布マップ(R:中心波長 0.659µm、G:0.530µm、Blue:0.445µm)を示している。下段は、ラーソン=セカニナ・グラディエントフィルターによる輝度マップで、画面左下の太陽方向に向かって顕著な反テイル(アンチテイル)ジェットが確認できる。その外観は、太陽から遠ざかっていくロケットのようにも見える。 (画像提供:Toni Scarmato)

人類は、宇宙に向けて「瓶に入れた手紙」を投げ続けてきました。

その象徴が、NASAの探査機 ボイジャー1号・2号に搭載されたゴールデンレコードです。そこには、地球の音楽、映像、言語、メッセージが収められ、いつか知的生命体が発見するかもしれない“人類の痕跡”として、今も太陽系の外へ向かって航行を続けています。


ハーバード大学の天体物理学者 アヴィ・ローブ博士は、新たな論考Riding 3I/ATLAS to the Stars において、この「宇宙へのメッセージ」という発想を、さらに大胆に拡張します。



ボイジャーは、あまりにも遅いのかもしれません


ボイジャー1号は、1977年9月5日に打ち上げられました。奇しくもその直後、地球外知的生命の可能性を示す Wow! シグナル が観測されています。


現在のボイジャー1号の速度は、秒速 17km。太陽からの距離は約 170天文単位(AU) に達しています。

しかし、恒星間空間の本当の入口とされるオールト雲の外縁(約10万AU) に到達するには、およそ2万8,000年 かかると見積もられています。

これは、人類の歴史から見ても、あまりに長い時間です。



3I/ATLASという「高速列車」


ここでローブ氏が注目するのが、恒星間天体 3I/ATLAS です。

この天体は、太陽系を離脱する際の速度が秒速約60km に達すると推定されています。

その結果、

  • ボイジャー:恒星間空間への本格的帰還まで 約28,000年

  • 3I/ATLAS:恒星間空間への帰還まで 約8,000年

という大きな差が生まれます。

言い換えれば、3I/ATLASに「乗る」ことができれば、人類は約2万年分の時間を短縮できるという発想です。

ローブ氏は、これを単なる空想ではなく、技術的に検討する価値のある選択肢として提示しています。



恒星間天体は「メッセージの運び屋」になり得るか


過去10年で、恒星間天体の発見は現実的な研究分野となりました。それは同時に、新たな可能性を開きます。

ローブ氏が挙げる案は、主に2つです。


1. 恒星間天体に「ゴールデンレコード」を残す

3I/ATLASのような大型の恒星間天体に接近する迎撃ミッションを設計し、その表面に、人類の情報を刻んだ記録媒体を設置する。

それは、未来の「恒星間考古学者」に向けた遺産となるかもしれません。


2. レーザーで直接メッセージを刻む

高出力レーザーを用いて、恒星間小惑星の乾燥した表面に情報を刻印するという方法です。

誰にも見られなければ、意味はないのでしょうか

ここでローブ氏は、哲学的な問いを投げかけます。

誰もいない森で木が倒れたとき、それは「音を立てた」と言えるのでしょうか。

恒星間天体に刻まれたメッセージも、誰にも気づかれなければ無意味なのではないか、という疑問です。

現実的な制約もあります。

現在の地上・宇宙望遠鏡では、マンハッタン島ほどの大きさの文字でさえ、地球—太陽間距離程度では分解できません。

しかし、もしそのような「看板」が 0.1AU以内 に現れたなら、大学には新しい学問分野が誕生するでしょう。

「恒星間考古学(Interstellar Archaeology)」 です。



芸術だけでなく、実用の痕跡かもしれません


ローブ氏は、技術的痕跡が必ずしも芸術的メッセージとは限らない点にも言及します。

それらは、

  • 鉱物資源の採掘

  • 燃料の取得

  • 恒星間航行のための補給

といった、実用目的のインフラである可能性もあります。


将来、ESAの Comet Interceptor のような迎撃ミッションが、恒星間天体に接近し、表面の詳細画像や分光データを取得する日が来るかもしれません。

また、ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡による分光観測で、

  • 人工照明

  • 内部熱源による赤外線過剰

といった兆候が検出される可能性もあります。



3I/ATLASに「ヒッチハイク」するという夢


ローブ氏は、ややユーモラスにこう締めくくります。

もし機会があったなら、3I/ATLASに乗って、自身の遺灰を恒星間空間へ運んでもらいたかった、と。

3I/ATLASやボイジャーが、天の川銀河の反対側に到達するまでには、約10億年 かかります。

しかし、多くの恒星は太陽よりも数十億年早く誕生しています。そこに文明が存在したなら、私たちの裏庭に到達する時間は、十分にあったはずです。

彼らの「ゴールデンレコード」や、最も野心的な探検者の痕跡が、今も恒星間天体の中に眠っている可能性は、決して否定できません。



編集部まとめ


―― 恒星間天体は、未来への近道かもしれません

3I/ATLASは、ただ通過する天体ではありません。それは、時間を短縮し、視野を拡張する乗り物としての可能性を示しています。


宇宙に何かを残すこと。それが誰かに見つかるかどうかは分かりません。

それでも、人類が宇宙に向けて手を伸ばす行為そのものが、文明の成熟を示す証なのかもしれません。

4件のコメント

5つ星のうち0と評価されています。
まだ評価がありません

評価を追加
ゲスト
2025年12月23日
5つ星のうち1と評価されています。

光速の五千分の一でしかなく、3I/ATLASだって恒星間飛行には遅すぎて乗り物には不適当。何一つ証拠のない知的生命体の関与説にいつまでも縛られるのは、科学ではなくSFの領域。天文学としては彗星の起源の恒星系の組成や、彗星を恒星間にまき散らす力学などを研究するほうが、よほど意味があると思われる。

いいね!
Acima Corp.
2025年12月24日
返信先

コメントありがとうございます。おっしゃる通り、宇宙というテーマ自体が、人それぞれに異なる視点やロマンを喚起するものだと思います。


科学は事実と検証を積み重ねて理解を深める営みですが、その過程で生まれる「想像」や「問い」もまた、多くの人が宇宙に関心を持つきっかけになってきました。どちらか一方だけでなく、立場や考えの違いが並んで存在できること自体が、健全な議論の土壌だと感じています。


本ブログでは、一次情報や研究者の発言を軸にしながら、読者の皆さまがそれぞれの視点で考えるための材料を提供できればと考えています。こうした温かいコメントも含め、共有いただけることに感謝いたします。

いいね!

​株式会社アシーマ​ (Acima Corporation)

​東京都渋谷区本町三丁目51番17号

​​

Tel:  03-5860-8451

Fax: 050-3488-7534 

info[at]acima.co.jp

LINE: line.acima

株式会社アシーマロゴ(Acima Corp.)
  • Acima Corp LinkedIn
  • Acima Corp Facebook Page
  • Acima Corp Instagram
  • Acima Corp Twitter
  • Acima Corp Youtube Channel

© 2007-2025 by Acima Corporation. All rights reserved.

bottom of page