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【新画像あり】3I/ATLASは“自然物”か“人工物”か──アヴィ・ローブ博士が語る「科学の自由」と7つの核心的質問

太陽の背後から姿を現した恒星間天体 3I/ATLAS。

その最新画像には、自然物とも人工物ともつかない複雑なジェット構造が映し出され、世界中の科学者と宇宙ファンの視線を一気に引き寄せています。


ハーバード大学のアヴィ・ローブ博士は、新たなQ&Aでこの天体が抱える「7つの核心的問題」を解き明かしながら、科学が本来持つべき“自由”と“想像力”について語りました。


2025年11月11日に撮影された、3I/ATLASの複雑なジェット構造の新しい画像。
2025年11月11日に撮影された、3I/ATLASの複雑なジェット構造の新しい画像。(クレジット:The Virtual Telescope Project)

恒星間天体 3I/ATLAS(アトラス)が太陽の背後から再出現し、その姿が改めて世界の注目を集めています。


ハーバード大学のアヴィ・ローブ博士は、ジャーナリスト Ivan Petričević 氏からの7つの質問に答える形で、3I/ATLASの最新観測から科学界の保守性まで、多岐にわたるテーマを語りました。


本記事では、博士の回答を整理し、いま起きている「科学的転換点」をわかりやすくお伝えします。



1. 3I/ATLASを“特別な天体”にしているものとは?


博士がまず指摘するのは、近日点通過後に観測された巨大で複雑なジェット構造です。


  • 太陽方向へ最大 100万 km

  • 反太陽方向へ最大 300万 km

これらのジェットは、自然物・人工物のどちらでも説明が可能ですが、その振る舞いはまったく異なります。


【自然物の場合】

  • 氷が太陽熱で昇華

  • ジェット速度は 数百 m/s が限界


【人工物(宇宙船)の場合】

  • 表面に推進装置(スラスター)

  • ジェット速度は 数 km/s

博士は次のように述べています。


「スペクトル観測によるドップラー速度測定を行えば、どちらが正しいかは容易に区別できます。」

つまり、今後数週間の観測が「自然」か「人工」かを決定づけるということです。



2. NASAはなぜHiRISE画像を“特別扱い”しているのか?


博士は、NASAが10月3日の接近時(火星から2,900万 km)に撮影したHiRISE画像を、いまだ公開していない理由について述べています。

「米国政府の42日間の政府閉鎖により、官僚的な理由で公開が止められているのです。」

さらに驚くべきは、HiRISE公式サイトに掲載された次の文です。

「3I/ATLASの画像はNASAニュース扱いのため、政府閉鎖中は公開できない。」

つまり、多数の火星画像は公開されるのに、3I/ATLASだけは非公開。博士は次のように批判します。

「科学は官僚主義の人質にされるべきではありません。」


3. なぜ科学者たちは“自然起源”に固執するのか?


博士の答えは非常に明快です。


「彼らは過去のデータで訓練されたAIと同じなのです。」
  • 彗星のデータ

  • 小惑星のデータ

この二つしか見てこなかったため、“空から来るものはすべて彗星か小惑星”という思考のバイアスが生じます。

博士はこう提案します。

「人類が宇宙に打ち上げた人工物も、訓練データに加えるべきです。」

そうすれば、2020 SOのように人工物を彗星と誤認するミスを防げる、というのです。



4. いま宇宙を通過している“見逃された星間物体”はどれほどあるのか?


博士は、私たちが見ているのは「氷山の一角」に過ぎないと指摘します。


◆ Rubin天文台(南半球)

  • 3.2ギガピクセルカメラで観測開始

  • 今後10年で 数十個の星間天体を発見すると予測

◆ 課題:速すぎる・小さすぎる天体は見逃される

  • 速度:数百 km/s

  • サイズ:100m以下

博士は、Rubin天文台の北半球版の建設を強く求めています。



5. SNS批判や同業者の嫉妬にどう向き合っているのか?


博士は、痛烈かつ率直です。

「私はSNSをしていませんし、“いいね”にも興味はありません。」
「私の常識的な意見に注目が集まることに、同僚が嫉妬しているのだと思います。それは彼らのセラピストの仕事です。」

さらに博士は、科学への姿勢を次のように語ります。

「科学とは探偵の仕事のようなものです。仮説を立て、観測し、真実に近づいていく。」

しかし、「氷天体(彗星)」の研究分野は特に保守的で、博士の方法論は受け入れられにくい現状があると述べています。



6. 科学界の“保守化”が若者を潰している


博士が最も危惧しているのは、若手科学者への悪影響です。


「私への個人攻撃を見て、若い研究者が“想像力を使わないほうが安全だ”と感じてしまうのです。」
  • 採用

  • 研究資金

  • 学術コミュニティの同調圧力

これらが、若者の自由な発想を妨げていると博士は指摘します。



7. IM1遠征で得られた“地球外物質”の意義


ローブ博士が主導した 星間隕石IM1の海底回収遠征は、2026年にNetflixドキュメンタリーになる予定です。

博士は述べています。

  • IM1から得られたサンプルは、太陽系では前例のない化学組成

  • すでに 6本以上の査読論文 が公開済み

  • 遠征中の怪我の跡も残っている(博士の足に傷痕がある)

これは、3I/ATLASの理解にも大きくつながる可能性があります。



8. 世界の若者へ──博士からのメッセージ


最後の質問に、博士はこう答えました。


「私はどの国にも行きたいと思っています。私たちは同じ船に乗り、同じ運命を共有しています。」

そして若者へ向けて:

「子どものころの好奇心を失わないでください。大人のふりをする必要などありません。」

博士は、星間文明の訪問者が地球の価値観を変える日が来ると信じています。



最後に──科学の自由は、好奇心から始まる


ローブ博士の回答に一貫しているのは、「科学は過去の知識ではなく、いま目の前にある証拠から始まるべきだ」という哲学です。


そして、未知は恐れるものではなく、対話すべき相手です。


博士の好奇心は、3I/ATLASという“星間の訪問者”を通じて、世界中の人々に再び「空を見上げる心」を呼び起こしています。




株式会社アシーマより

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