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【2026年 新年特集】アヴィ・ローブ氏が読み解く恒星間天体 3I/ATLAS

― 観測データが示す「異例」と、宇宙考古学という視点 ―


2026年1月7日にハッブル宇宙望遠鏡によって撮影された恒星間天体 3I/ATLAS の画像

 Larson–Sekanina 回転勾配フィルター を適用して処理した画像
2026年1月7日にハッブル宇宙望遠鏡によって撮影された恒星間天体 3I/ATLAS の画像(上段)と、それに Larson–Sekanina 回転勾配フィルター を適用して処理した画像(下段)。下段の画像では、三本のジェット構造が確認され、そのうちの一本は、画像の左下方向、すなわち 太陽方向 に向かって伸びる顕著な 反尾ジェット(anti-tail jet) である。この反尾は、地球―月間距離と同程度のスケールにまで達している。(画像クレジット:NASA/ESA/STScI が公開したデータを基に Toni Scarmato が処理)

あけましておめでとうございます。


久しぶりの更新となりますが、2026年の幕開けにふさわしいテーマとして、年末年始に集中的に発信された Avi Loeb氏 の記事(2025年12月24日〜2026年1月15日)を、科学的整合性と用語の正確さを重視したダイジェスト版としてお届けします。


本記事では、センセーショナルな解釈を避けつつ、「何が観測され、何が未解決なのか」に焦点を当てます。



1. 反太陽方向に向かう「ジェット状構造」という異例


3I/ATLAS の観測で最も注目を集めたのが、反太陽方向に伸びる複数の構造です。


一般に「反尾(anti-tail)」は、彗星が放出した比較的大きな塵が軌道面上に残り、幾何学的効果によって太陽方向に向いているように見える視覚現象と説明されます。


しかしローブ氏が強調するのは、今回観測された構造が単なる尾ではなく、方向性を持った「ジェット状(jet-like)構造」に見える点です。


  • ハッブル宇宙望遠鏡の高解像度データ

  • 太陽風だけでは説明しにくい形状

  • 非重力的な力の関与を示唆する可能性


これらを踏まえ、ローブ氏は

「通常は視覚効果とされる反尾を、今回は物理的放出現象として再検討すべきだ」という立場をとっています。これは 1I/‘Oumuamua の議論と一貫したアプローチです。


2. 3I/ATLASの観測視点の問題:惑星トランジットの言及について


年末の記事の中には、「惑星が恒星面を横切る現象(トランジット)」に関する言及があります。重要なのは、これは地球から見た現象の話ではないという点です。


2026年初頭、地球から観測される内惑星の太陽面通過は起きません。この文脈でのトランジットは、


  • 恒星間天体 3I/ATLAS 側から見た視点

  • あるいは、系外惑星探査で用いられるトランジット法を説明するための一般論

として理解するのが妥当です。


ローブ氏はしばしば、「観測者の立場を反転させる思考実験」を用いて、天体力学や探査手法の理解を深めようとします。今回の記述も、その延長線上にあります。



3. 木星の微小不規則衛星エウフェメへの接近予測


ローブ氏の記事の中でも、特に専門性が高いのが木星の不規則衛星エウフェメ(Eupheme)への接近予測です。


エウフェメは直径約2kmの極めて小さな衛星で、ガリレオ衛星とは異なり、木星から遠く離れた不規則軌道を回っています。


このような天体名が具体的に挙げられていること自体が、

  • 軌道計算がかなり精密に行われている

  • 「話題性」ではなく力学モデルに基づく議論

であることを示しています。


恒星間天体が太陽系を通過する際、主要衛星よりも不規則衛星と遭遇する確率が相対的に高いという点も、重要な補足です。



4. 2026年1月22日 ― 決定的観測機会「衝(Opposition)」


2026年1月22日には、太陽―地球―3I/ATLAS がほぼ一直線に並ぶ配置が訪れます。


天文学ではこれを 衝(opposition) と呼びます。


この配置が重要な理由は明確です。

  • 天体が太陽光を正面から受け、最も明るく見える

  • 位相角がほぼ0度となり、偏光観測(polarimetry) に最適

  • 表面が岩石質か、金属的か、あるいは異質な反射特性を持つかを判別しやすい


ローブ氏は、このタイミングを「成分分析におけるゴールデンタイム」と位置づけています。占いや象徴的な「整列」ではなく、純粋に観測科学上の好機です。



5. 宇宙考古学という視点



これら一連の議論の底流にあるのが、ローブ氏が提唱する 「宇宙考古学(Space Archaeology)」 という考え方です。


  • 恒星間天体は、必ずしも自然物とは限らない

  • もし他文明の痕跡が存在するとすれば、それは遺物として発見される可能性が高い


3I/ATLAS についても、「人工物だと断定すること」は避けつつ、「自然物だと断定する根拠もまだない」という、極めて慎重な立場が貫かれています。


ローブ氏の特徴は、ロマンを語りながらも、常に 観測データと未解決点の列挙 に議論を戻す点にあります。



まとめ:問いはまだ開かれている


2025年末から2026年初頭にかけてのローブ氏の発信は、3I/ATLAS をめぐる議論を次の段階へ押し上げました。


  • 反尾とされてきた現象の再検討

  • 精密な軌道力学に基づく接近予測

  • 衝という決定的観測機会への備え


重要なのは、結論を急がないことです。


3I/ATLAS は、いまなお「自然物か、未知の物理か、あるいはそれ以外か」という問いを、私たちに突きつけ続けています。


この問いにどう向き合うか。それ自体が、現代天文学と人類の知的成熟を映す鏡なのかもしれません。



今回の内容について、みなさまはどのように考えますか?

ぜひご意見やご感想をコメントでお聞かせください。

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