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ハッブルが発見:“太陽側へ6万km”伸びる3I/ATLASの異常構造

3I/ATLAS
2025年11月30日、ハッブル宇宙望遠鏡に搭載された広視野カメラ3(WFC3)が撮影した、恒星間天体3I/ATLASの近日点通過後の画像です。撮影時、3I/ATLASは地球から約2億8,600万キロ離れていました。背景の恒星は相対運動のため光の筋となって写っています。明るく輝くコマ(ガスと塵の雲)は涙滴型をしており、太陽方向(黄色矢印で示された左下方向)に細長く伸びるアンチテイルが確認できます。 (画像提供:NASA, ESA, STScI, D. Jewitt(UCLA), M.-T. Hui(上海天文台)/画像処理:J. DePasquale(STScI))

ハッブル宇宙望遠鏡が、3I/ATLASの“常識外れの姿”を再び捉えました。


11月30日に公開された最新画像には、太陽方向へ 6万km 以上も伸びる異常な“アンチテイル”が明瞭に写り込んでいます。

この構造は 近日点“前”の7月観測にも出現しており、前後で向きが変わらないという極めて異例の挙動を示しています。


さらに、回転勾配フィルターによる解析では、2本のジェットが太陽方向へ向かって噴出していることも判明。太陽系彗星とは正反対の動きを示すこれらの特徴は、複数の独立した観測(ハッブル+アマチュア天文家)で確認されました。

なぜ3I/ATLASは“太陽側”へ伸び続けるのか?最新画像と科学的示唆をまとめます。



■ ハッブル最新画像が示した3I/ATLASの“涙滴コマ”の正体


11月30日に撮影されたハッブル宇宙望遠鏡(HST)の画像では、3I/ATLAS の中心を包む 涙滴(ティアドロップ)型のコマが鮮明に捉えられています。

このコマは半径約 4万km に広がり、通常の彗星よりもはるかに大きく、内部のガスや塵が滑らかに広がっている様子がわかります。

この形状は、太陽からの加熱だけでは説明が難しい点があり、3I/ATLAS が従来の太陽系彗星とは異なる性質を持つ可能性を示しています。



■ “太陽方向へ6万km”伸びるアンチテイルという異常


さらに大きな特徴は、3I/ATLAS が 太陽方向(Sunward)へ 伸ばしているアンチテイルです。

通常の彗星は、太陽風や放射圧の影響で反太陽方向(Anti-Sun)にテイルが伸びるのが一般的ですが、3I/ATLAS のテイルはその“常識”と逆を行きます。


さらに、今回確認されたアンチテイルの長さは 6万km以上

この値は、ローブ博士の最新論文にある「物体群が太陽側へ6万kmほどシフトしているはず」という予測とも一致しており、科学的に非常に興味深い一致となっています。



■ 3つの画像処理が示した“2本のジェット”の存在


天文学者 Toni Scarmato 氏が行った解析では、ハッブルの画像に Unsharp Mask やLarson–Sekanina フィルター を適用することで、3I/ATLAS から 2本のジェットが太陽方向に向かって噴出していることが確認されました。


これは非常に特異な現象です。


太陽系彗星の場合、ジェットは通常 “核の回転軸” に沿って分布し、その方向は太陽風や熱によって変化しやすいのですが、3I/ATLAS のジェットは 近日点の前後で向きが変わらず、常に太陽方向を指している のです。


この“向きの一貫性”は、既存の彗星物理モデルでは説明が難しい部分であり、3I/ATLAS の特異性を象徴する特徴といえます。




■ 7月のハッブル画像にも同じ“太陽向き”の兆候があった


3I/ATLAS
2025年7月21日にハッブル宇宙望遠鏡が撮影した、恒星間天体3I/ATLASの近日点通過“前”の画像です。明るさの等高線は、太陽系の彗星で一般的に見られる“反太陽方向”ではなく、太陽方向に向かって散乱光が伸びている様子を示しています。黄色と緑の矢印はそれぞれ、投影された“負の太陽中心速度ベクトル”と“反太陽方向”を示しています。4秒角のスケールバーは、地球—太陽間距離の2.98倍に相当する3I/ATLASの位置では約8,650 kmに相当します。 (クレジット:Jewitt et al. 2025)

実はこの現象は今回が初めてではありません。3I/ATLAS が太陽へ接近していた 2025年7月21日 のハッブル画像にも、同じく 太陽 Richtung(太陽側)へ伸びる構造 が確認されていました。

  • 7月:太陽へ近づく途中

  • 11月:太陽から離れる途中

本来なら、“前後でテイルの向きが反転” するはずのタイミングですが、3I/ATLAS は 前後で方向が変わらない という極めて異例の挙動を示しています。

こうした“継続性のある異常”は、天文学では非常に重要な特徴として扱われます。



■ アマチュア天文家による大規模画像が裏付ける異常構造


世界各地のアマチュア天文家も、3I/ATLAS の観測に大きく貢献しています。


● 11月28日(ナミビア)

Michael Jäger 氏と Gerald Rhemann 氏が撮影した画像では、太陽方向へ伸びる巨大な明暗構造が確認されました。視野は数百万 km にもおよび、外層まで続く複数のジェットの存在がわかります。


● 12月2日(カナダ・CSA)

こちらの画像では、視野が 250 × 190 百万km という驚異的な広さに達しており、3I/ATLAS の外層構造がいかに広範囲に及んでいるかが分かります。

複数の独立した観測で同じ太陽側構造が捉えられた ことは、今回の現象が偶然ではないことを強く示しています。



■ 科学的に推測されていること:非揮発性“マクロ粒子群”モデル


ローブ博士は最近の論文で、今回のような“太陽側へのズレ”を説明するためにマクロサイズの非揮発性物体群(粒子群) の存在を提案しています。

これは、

  • 近日点付近で天体本体から大きめの粒子が分離

  • それらが非重力的な加速を受け

  • “太陽方向へ” 約6万km シフトする

というモデルです。

今回のハッブル画像で観測されたアンチテイルの長さと方向がこのモデルと一致した ことは、今後の研究の重要な手がかりになります。




■ ACIMA WORLD NEWSとしての見解


今回の連続観測は、3I/ATLAS が太陽系彗星とは明らかに異なる物理モデルで振る舞っている可能性を強めています。

  • 太陽側へのテイルの持続

  • 2本のジェットの一貫性

  • 涙滴型の巨大コマ

  • モデルとの6万km一致


これらは単独で見ても重要ですが、「すべてが連続して成立している」点がより大きな意味を持ちます。

今後公開予定の 2026年2月のJuice観測データ(UV分光・粒子データ) は、3I/ATLAS の本質を知る上で欠かせない“決定打”となるでしょう。



■ 付録:AIフェイク動画問題について

ここ数週間、ローブ博士を装ったAI生成のフェイク動画 がYouTubeに投稿され、博士本人の主張とは異なる“偽情報”が拡散される問題が発生しました。


博士とファンの通報により動画は削除されましたが、直後に別の偽チャンネルが登場するなど、AIフェイクと科学情報の信頼性を巡る課題が浮き彫りになっています。


ACIMA WORLD NEWS では今後も一次情報を基にした正確な報道 を続けていきます。



■ コメントをお寄せください


今回の観測について、みなさまはどのように考えますか?ぜひご意見やご感想をコメントでお聞かせください。


なお、アシーマでは企業・研究機関向けに、

宇宙・科学・技術分野のリサーチ、英語資料作成や専門翻訳のサポートも行っております。

必要に応じて、編集部までお気軽にお問い合わせください。



■ 参考情報(Sources)

本記事の内容は、以下の一次情報および観測データを基に、ACIMA WORLD NEWS 編集部が再構成したものです。


  • Avi Loeb(Medium):2025年12月公開の 3I/ATLAS 関連分析記事

  • Jewitt, Hui et al.(2025):ハッブル宇宙望遠鏡による 3I/ATLAS 観測データ

  • NASA / ESA / STScI:Hubble WFC3 画像および公式リリース

  • Toni Scarmato(画像解析):Unsharp Mask・Larson–Sekanina フィルター処理

  • Michael Jäger & Gerald Rhemann(アマチュア観測)

  • CSA / DAO / NRC(カナダ):2025年12月2日の広角観測データ

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