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近日点前に揺れていた反太陽尾:3I/ATLASで初めて確認された周期的ウォブル

ACIMA WORLD NEWS 編集部

2025年12月17日


恒星間天体 3I/ATLAS の観測画像。
恒星間天体 3I/ATLAS の観測画像。紫の細線は、明るさのピーク(赤い点線円)から約6,000kmの位置で測定されたアンチテイル・ジェットの方向を示しています。赤い矢印は速度ベクトル、黄色の矢印は反太陽方向を表します。オレンジ色の線はアンチテイルの平均方向から推定された自転軸の向きで、等高線は輝度分布を示しています。黒く細い線状構造が、太陽方向(おおよそ北西)へ伸びるアンチテイルです。 (画像提供:Serra-Ricart, Licandro & Alarcon 2025)

3I/ATLASのアンチテイル、近日点前に周期的な揺れを示していた――恒星間天体で初めて確認されたジェットの歳差運動


恒星間天体 3I/ATLAS をめぐる観測から、これまでに例のない動的な特徴が明らかになりました。


アヴィ・ローブ博士が紹介した最新の研究論文によると、3I/ATLASのアンチテイル(反太陽尾)は、近日点通過前の段階で周期的に揺れる挙動(ウォブル)を示していたというのです。

このような周期的なジェット方向の変動が恒星間天体で確認されたのは、今回が初めてとなります。



■ 観測されたウォブル:7.74時間周期


論文によりますと、2025年7月から8月にかけて取得された観測データから、アンチテイルのジェット方向が 7.74 ± 0.35時間 の周期で変化していることが検出されました。


この揺れは、アンチテイルの噴出源が、天体核の自転軸に対応する極点からわずかにずれた位置に存在することで生じると考えられています。


その結果、ジェット軸は自転軸の周囲を円錐状に歳差運動し、灯台やパルサーの回転ビームに似た挙動を示すと説明されています。



■ 37夜分の観測に基づく詳細解析


今回の解析は、スペイン・カナリア諸島テネリフェ島のテイデ天文台に設置されたTwo-meter Twin Telescope(TTT)によって取得された、2025年7月2日から9月5日までの37夜分の観測画像を用いて行われました。


画像には、高緯度から噴出する淡いアンチテイルが写っており、一見するとほぼ一定の方向を保っているように見えます。しかし、明るさのピークから約6,000km離れた位置でジェットの角度を精密に測定したところ、周期的な変調が存在することが明らかになりました。



■ 自転周期との整合性


アンチテイルが自転軸近くの単一の活動領域から発生していると仮定した場合、7.74時間というウォブル周期は、天体核の自転周期が約15.48 ± 0.70時間である可能性を示唆します。

この値は、2025年7月に報告された、3I/ATLASの周期的な明るさ変動から導かれた16.16 ± 0.01時間という自転周期ともよく一致しています。


複数の独立した観測結果が、同じ回転特性を指し示している点は注目に値します。


恒星間天体 3I/ATLAS のアンチテイルの位置角
恒星間天体 3I/ATLAS のアンチテイルの位置角を、明るさのピークから約6,000kmの位置で測定し、7.74±0.35時間の周期で位相化した結果を示しています。赤い水平線は位置角の平均値で、天球上に投影された自転軸の向きを表しています。(画像提供:Serra-Ricart, Licandro & Alarcon 2025)

■ 近日点と新月が重なる観測好機


3I/ATLASは、2025年12月19日 06時02分(UTC)に、地球から約 2億6891万km の距離まで接近します(日本時間では2025年12月19日 15時02分です)。


偶然にもこの夜は新月にあたり、月明かりの影響を受けずに観測できる好条件が整います。地上および宇宙の複数の望遠鏡によって収集されるデータは、この恒星間天体の性質をさらに詳しく明らかにするものと期待されています。



■ 科学的好奇心は世界中から寄せられている


ローブ博士は記事の後半で、世界各地から寄せられたメッセージを紹介しています。その中には、チリ・パタゴニアから届いた手紙や、米国マサチューセッツ大学ボストン校(UMass Boston)の倫理学教授による考察も含まれていました。


その内容は、既存の理論や前提が、観測結果の解釈を無意識のうちに縛ってしまう危険性を指摘し、3I/ATLASを「自然天体」と即断する前に、まずはデータそのものに向き合う必要性を静かに問いかけるものです。



■ 結論(現時点)


3I/ATLASのアンチテイルは、

  • 長さ

  • 方向

  • そして時間的変動

のいずれにおいても、これまでに知られている恒星間天体の挙動を大きく超える特徴を示しています。


それが自然現象の範囲に収まるのか、あるいは新たな解釈を必要とするのか。

結論はまだ出ていません。


しかし、この天体が前例のないデータを私たちにもたらしている存在であることは、もはや疑いようがありません。


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