マニュアル翻訳を依頼する際のポイント|取扱説明書・技術文書・業務マニュアルの翻訳
更新日:10月6日

マニュアルや取扱説明書、技術文書、業務手順書は、製品やサービスを安全かつ正しく使うための重要な情報源です。
また、海外展開や外国人スタッフ向けにこれらを翻訳する場合、単に文章を別の言語に置き換えるだけでは十分ではありません。
用語の統一、図表や番号との整合性、読み手の理解しやすさ、製品仕様との一致など、一般的なビジネス文書とは異なる注意点があります。
この記事では、マニュアル翻訳を翻訳会社に依頼する際に確認したいポイントを解説します。
取扱説明書・製品マニュアルの翻訳では、用語の統一、仕様の正確性、読み手に伝わる自然な表現を同時に管理する必要があります。法人向けの 専門翻訳・多言語翻訳サービス では、取扱説明書、技術資料、IT・ソフトウェア関連文書を含む各種ビジネス文書に対応しています。
発注前に「誰が、どの製品を、どこで使うか」を決める
同じ製品でも、一般利用者向けの取扱説明書と、保守担当者向けの手順書では必要な前提知識が異なります。対象読者、製品の型番、ソフトウェアの版、販売・使用する国や地域、希望する言語の表記を明確にしましょう。英語版でも、画面の表示、単位、日付などの扱いを先に決めておくと確認が進めやすくなります。
翻訳範囲は本文だけでなく、表紙、目次、図中の文字、警告ラベル、スクリーンショット、付録、別紙も含めて一覧化します。「100ページの英訳」だけでは、画像内の文字や編集作業が見積もりに含まれているか分かりません。翻訳しない製品名・コード・商標も指定します。
マニュアル翻訳が難しい理由
マニュアルには、専門用語、製品名、部品名、操作手順、警告文、数値、図表などが多く含まれます。翻訳の一部に誤りがあるだけでも、操作ミスや理解不足につながる可能性があります。
さらに、同じ用語が数十ページ、数百ページにわたって繰り返されることも多いため、文書全体で訳語を統一する必要があります。
1.マニュアルの種類に合った翻訳者を選ぶ
「マニュアル」と一口に言っても、取扱説明書、操作マニュアル、技術仕様書、保守マニュアル、業務マニュアル、研修資料など、内容はさまざまです。
機械、IT、製造、医療機器、建設、物流など、対象分野によって必要な知識も異なります。翻訳会社を選ぶ際には、対象分野の技術文書やマニュアルの経験があるかを確認するとよいでしょう。
例えば、操作マニュアルでは画面と手順の対応、保守マニュアルでは部品名や作業条件、業務マニュアルでは役割分担と承認ルートが確認の中心になります。翻訳会社には文書の名称だけでなく、実際の章やサンプルを見せ、内容を理解できる担当者と確認体制を相談してください。
2.専門用語と製品用語を統一する
マニュアル翻訳では、同じ言葉を毎回同じ訳語で表現することが特に重要です。部品名、機能名、画面名、コマンド名などがページごとに変わると、利用者は同じものを別のものだと誤解する可能性があります。
既存の用語集、過去の翻訳、製品カタログ、Webサイトなどがある場合は、依頼時に共有しておくと表記を統一しやすくなります。
用語集には、原語、承認済みの訳語、意味・使用場面、表記を変えてはいけない名称、承認者、更新日を入れます。単語の対訳だけでは、同じ語が別の意味で使われる場面に対応できません。新しい用語が出た場合に誰が確定し、各言語版へどう共有するかも決めておきます。
画面に「Settings」と表示される製品なら、本文中のボタン名を別の呼称にしないことが重要です。画面自体が未翻訳の場合には、現地語の説明に英語の表示名を併記するなど、利用者が実物と照合できるルールを作ります。過去訳と現行画面が異なるときは、過去訳を無条件に優先せず確認します。
3.図表・番号・画面表示との整合性を確認する
マニュアルでは、本文だけでなく、図表、キャプション、ボタン名、画面表示、参照番号などとの対応が重要です。本文の訳だけが正しくても、図中の名称や手順番号と一致していなければ、利用者にとって使いにくい文書になります。
PowerPoint、Word、Excel、PDF、InDesignなど、元データの形式によっては、翻訳後のレイアウト調整が必要になることもあります。
PDFだけでなく、編集可能なWordやInDesignの元データ、図版、リンク画像、必要なフォント情報も用意できるか確認します。画像化された文字は別途抽出や作り直しが必要になる場合があります。PDFへの直接追記と、元データから多言語版を組み直す作業は、同じ納品物ではありません。
翻訳後は文字の長さが変わるため、枠からのはみ出し、図と説明の分離、表の折り返し、目次や参照先のずれを確認します。本文の翻訳チェックを終えた後も、最終PDFや実際のヘルプ画面での確認工程を設けます。レイアウト調整によって文字が隠れたり脱落したりしていないかを見るためです。
4.警告文・注意事項は特に慎重に扱う
取扱説明書や技術マニュアルには、「危険」「警告」「注意」など、安全に関わる記述が含まれることがあります。こうした文章は、自然な表現にするだけでなく、原文の重要度や意味を正確に保つ必要があります。
安全情報を含む文書では、翻訳者の専門性に加えて、翻訳後のチェック体制も重要です。
原文に曖昧な指示や数値の不一致があった場合、翻訳者だけで製品仕様や安全上の判断を補ってはいけません。疑問点を記録し、設計・品質保証など内容を承認できる担当者に確認します。危険の程度、禁止事項、実行条件を弱めたり強めたりする訳になっていないかも重点的に照合します。
使用情報の作成には、IEC/IEEE 82079-1:2019という参考規格があります。ただし、参考規格の紹介と、個々の製品への適合判断は別です。適用する規格・要求事項は発注側の責任者と整理し、翻訳の検収と技術・安全内容の承認を混同しないようにします。
5.大量ページではプロジェクト管理が重要
マニュアル翻訳は数十ページから数百ページ、場合によっては複数冊に及ぶことがあります。複数の翻訳者で分担する場合、訳語や文体がばらつかないように管理する必要があります。
大量案件では、用語集の作成、翻訳ルールの共有、進捗管理、最終的な統一チェックなど、翻訳者個人の能力だけでなく翻訳会社のプロジェクト管理力が重要になります。
着手時には、代表的な数ページで用語、文体、表記をすり合わせてから全体を進める方法が有効です。疑問点はファイル名・章・原文・確認内容・回答・承認日を一つの一覧で管理します。同じ質問に部署ごとに異なる回答が出る場合は、発注側の窓口が結論をまとめると手戻りを減らせます。
6.改訂版への対応を考えておく
マニュアルは、製品改良やソフトウェア更新、仕様変更などに伴って改訂されることが多い文書です。毎回すべてを翻訳し直すのではなく、過去の翻訳を活用しながら変更部分を更新できれば、コストと納期を抑えやすくなります。
継続案件では、過去の翻訳データや用語集を適切に管理できる翻訳会社を選ぶことも大切です。
改訂時は、旧版と新版の原文、旧版の翻訳、変更履歴をそろえます。変更箇所だけを翻訳して終えるのではなく、その変更が参照番号、図版、別章の説明、ほかの言語版に波及しないかも確認します。追加だけでなく、削除した手順や廃止した機能の記述が残っていないかも重要です。
翻訳メモリは過去の原文と訳文の組み合わせを再利用する仕組みで、用語集とは役割が異なります。一致した文でも、対象機種や文脈が変われば再確認が必要です。継続利用する場合は、データの保管、引き継ぎ形式、利用権限、機密情報の扱いを契約時に確認しておきましょう。
7.翻訳後のチェック内容を確認する
マニュアル翻訳では、誤訳や訳抜けだけでなく、数字、単位、部品番号、図表番号、見出し、用語統一など、確認項目が多岐にわたります。
見積もりを取る際には、翻訳後にどのようなチェックが行われるのか、校正やレイアウト確認まで含まれているのかを確認しましょう。あなたの会社にチェックできる人がいる場合は、その方との連携がスムーズか、どれくらいの時間がかかるかなども確認しましょう。
翻訳・技術確認・最終レイアウト確認を分ける
翻訳工程では原文と訳文の意味を照合し、技術担当は製品の仕様・動作・画面との一致を確認し、組版後には図表・参照先・文字欠落を確認します。「校正済み」の一言では担当範囲が曖昧になるため、誰が何を確認し、どの状態を納品完了とするかを合意します。
数字や単位、タグ、用語の不統一を機械的に検出するチェックは役立ちますが、それだけで条件や否定の意味まで確認できるわけではありません。重要箇所は原文対訳で確認し、必要に応じて発注側の担当者が実機や検証環境と照合します。
原文の指示自体が曖昧なら、翻訳前に解消する
説明用の架空例として、「設定して保存する」だけでは、どの画面で何を設定し、何をもって完了とするのか不明確です。対象画面、入力内容、保存操作、期待する表示を分けて確認すると、訳文も検収しやすくなります。実際の仕様を確認せず、翻訳時に手順を創作するという意味ではありません。
Googleの技術文書ガイドも、操作の場所・目的・結果を明確にする考え方を示しています。翻訳しやすい原文への整理は、読み手の理解を助けるためにも有効です。
マニュアル翻訳を依頼する前に準備したいもの
翻訳対象の確定版ファイル
既存の用語集・用語リスト
過去の翻訳データ
製品カタログや参考URL
対象読者と使用目的
希望納期
希望する納品形式
マニュアル翻訳の料金と納期を比較するポイント
費用を左右するのは、言語、原文の文字数・ワード数、専門性、ファイル形式、再利用できる過去訳、図版の編集、チェック範囲です。同じページ数でも文字密度や図版数が違うため、ページ数だけで比較すると条件がそろいません。翻訳、レビュー、レイアウト、最終確認がそれぞれ含まれるかを確認します。
納期も、翻訳作業だけでなく、用語確定、質問への回答、社内レビュー、修正、組版後の確認に必要な時間を含めて考えます。販売開始日や印刷入稿日から逆算し、発注側の確認期限を工程表に入れます。途中で原稿を差し替える場合の追加費用と納期への影響も先に取り決めます。
AI翻訳や機械翻訳を使う場合に決めておくこと
AI翻訳を利用する場合も、用途に応じた人の確認と、利用するサービスへの情報送信の可否を決めます。未公開仕様や顧客情報を含む原稿を、承認していない外部サービスへ送らないことが前提です。自然に読める文章でも、禁止と推奨、条件付きの操作、数値、部品名が原文と一致しているかは別に確認します。
依頼時には「機械翻訳を使うか」「使う工程はどこか」「誰が原文と照合するか」「用語と改訂データをどう管理するか」を確認しましょう。対象文書やリスクに合わない工程を、費用だけで選ばないことが重要です。
依頼前によくある質問
PDFしか残っていなくても依頼できる?
まずPDFを共有して、文字を取り出せるか、画像内の文字があるか、希望の納品形式に対応できるかを確認します。スキャン原稿では文字認識の誤りも確認対象になります。抽出、翻訳、図版編集、レイアウト再現のどこまで依頼するかを分けて見積もると、認識の違いを防げます。
原稿が確定する前に相談してもよい?
概算や体制の相談は、章立てとサンプル、想定分量、使用言語、希望納期がある段階でも進められます。ただし、実作業の基準となる版を決めずに進めると、変更の追跡が難しくなります。正式な着手版と、その後の差し替えルールを必ず合意します。
マニュアル翻訳は「読みやすさ」と「正確さ」の両方が必要
マニュアルは、正確であるだけでは十分ではありません。実際に読む人が迷わず理解し、必要な操作を行える文章であることも重要です。
そのため、マニュアル翻訳を依頼する際には、価格だけでなく、対象分野の専門性、用語管理、チェック体制、レイアウト対応、改訂時の継続性まで含めて翻訳会社を選ぶことをおすすめします。
株式会社アシーマは2007年の創業以来、400社以上の企業・組織、2,400件以上のプロジェクトを支援してきました。65言語以上、1,200名以上の言語専門家・スペシャリストのネットワークを活用し、マニュアル、技術文書、社内文書、法務文書など幅広い法人向け翻訳に対応しています。
ご相談時には、対象文書のサンプル、言語、納期、納品形式に加えて、図版編集や改訂対応の有無をお知らせください。専門分野や文書の種類は、アシーマの翻訳実績もご参照いただけます。
関連する記事:IT・ソフトウェア翻訳のポイント / 翻訳会社への依頼方法
参考資料
参考資料の公開説明は2026年10月6日に確認しました。規格への言及は一般的な情報提供であり、アシーマの認証取得や個別製品への適合を示すものではありません。





コメント