恒星 HD 7977 は、250万年前の“人類誕生”に影響したのか?──アヴィ・ローブ博士の最新研究
- ACIMA WORLD NEWS 編集部

- 4 日前
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■ 250万年前、“近くを通ったある恒星”が地球の進化を変えた可能性
私たちは通常、太陽系の外にある宇宙が地球の生命に直接影響を与えるとは考えません。しかし、近年の恒星間天体 3I/ATLAS の出現が示したように、宇宙は予想外に「こちら側」に入り込んできます。そして、たとえ自然物であっても、太陽系外からの訪問者は地球環境に大きな変化をもたらす可能性があります。
今回、アヴィ・ローブ博士が発表した新論文(Nature誌に掲載決定)は、約250万年前に太陽系の外縁を通過した恒星「HD 7977」が、地球に巨大な彗星シャワーを降らせた可能性を示しました。その時期は、人類(ホモ属)が地球上に姿を現したとされるタイミングと一致します。
果たしてその彗星シャワーは、地球の環境を変化させ、私たち人類の誕生に役割を果たしたのでしょうか?
■ Oort(オールト)雲とは何か?
太陽から最大10万AU(天文単位)以上も離れたところに存在するとされる、氷と塵の小天体の巨大な貯蔵庫。1950年、天文学者フレッド・ホイップルが「彗星は“汚れた雪玉”である」と提唱したのが概念の始まりです。
Inner Oort Cloud(IOC):内側エリア、より密集した彗星源。
Outer Oort Cloud(OOC):外側エリア、長周期彗星の主な供給源。
ここを恒星が通過すると重力で彗星が太陽方向に引き出されるため、大規模な彗星シャワーが地球へ到達します。
■ 恒星 HD 7977 が通過した時期=人類誕生の頃
ローブ博士の計算によると、
▶ HD 7977 は約 2.5 百万年前に Oort 雲を横切った
その結果:
IOC の彗星軌道が大きく乱され、内側へ大量に落ち込む
地球へ一直線に向かう軌道の彗星が増加
彗星衝突リスクが“10倍”に増加した可能性
これはちょうど、
▶ 地球が温暖で安定した気候から、氷期・間氷期サイクルへ移行した「鮮新世〜更新世境界」の頃
と重なります。気候変動が激しさを増し、人類が登場したとされる時期です。
■ 彗星シャワーは本当に発生したのか?
ローブ博士らは、HD 7977 の最接近距離(bパラメータ)が約 2300 AU だった場合、直径1km級の彗星が地球に衝突する確率が一桁上昇すると計算しました。
実際の地球衝突クレーター(10百万年前まで)を調査
月面のクレーター増加ピークが「300万年前」に存在すれば、強力な証拠となる
彗星の多くは大気圏で分解しクレーターを残さないため、痕跡の発見は容易ではありませんが、地質学の進展により“証拠”が得られる可能性はあります。
■ 彗星シャワーが「人類誕生」を後押しした可能性
ローブ博士は次のように述べています。
もしHD 7977の通過が地球環境変化を促し、ホモ属の出現に貢献したのだとしたら、私たち人類は、太陽系外から飛来した“汚れた雪玉”の影響で誕生したのかもしれない。
どこか詩的でありながら、科学的にも挑戦的な仮説です。
博士は芸術家とのコラボレーションにも触れ、科学と芸術の境界は曖昧であり、どちらも「創造性と謙虚さ」を基盤にしていると語ります。
最新の3I/ATLAS画像からインスピレーションを受けた音楽作品、そして博士自身が制作する予定の「エイリアン像」。宇宙研究と芸術表現が交差する、非常にローブ博士らしい締めくくりです。
■まとめ:星の“通過”が人類を生んだ?
約250万年前、恒星 HD 7977 が太陽系外縁に接近
Oort 雲が乱され、巨大な彗星シャワー発生か
その時期は、人類誕生・地球気候変動と一致
彗星衝突による環境変化がホモ属の登場に関与した可能性あり
宇宙は想像以上に“身近”であり、私たちの歴史にも深く関わっているのかもしれません。今後の地質学的調査が、この壮大な仮説の鍵を握ります。

いかがでしたでしょうか?
宇宙は、私たちの想像を静かに超えてきます。太陽系の外を巡る恒星の通過が、地球の環境を揺さぶり、やがて人類の誕生にまでつながったかもしれない──今回の研究は、そんな壮大な“因果の糸”を示唆しています。
3I/ATLAS や HD 7977 のような遠い存在は、決して無関係ではありません。むしろ、私たちという存在そのものが、宇宙の偶然と必然の積み重ねによって形づくられてきたのだと気づかされます。
そしてその理解は、科学の最前線に立つ研究者だけでなく、私たち一人ひとりにとっても、世界の見え方を大きく変えてくれるはずです。
次にどんな天体が太陽系を訪れ、どんな発見が私たちを驚かせるのか──。
未知が開かれていく過程を、これからもアシーマは丁寧に追いかけ、正確で読みやすい情報としてお届けしていきます。
宇宙の物語は、まだ始まったばかりです。
文:ACIMA WORLD NEWS 編集部
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