top of page

238光年先の恒星方向で記録した謎の電波――FAST信号「NBS 260108」を独立再解析

11 分前
読了時間: 4分

地球から約237〜238光年離れた惑星系の方向で、中国の巨大電波望遠鏡FASTが記録した一本の狭い帯域の電波。その正体について、新たな検証が進んでいます。

2026年10月31日、独立研究グループThe Contact Projectは、FASTの過去の観測記録を再解析した暫定的な成果を公開しました。対象は「NBS 260108」と呼ばれる信号候補です。ただし、宇宙人の通信が確認されたという発表ではありません。元の査読研究では、地球上の通信などによる電波干渉の可能性が高いと判断されています。

【画像】中国・貴州省の500メートル球面電波望遠鏡FAST(2025年撮影)。Credit: SCJiang / Wikimedia Commons / CC BY-SA 4.0。改変なし。今回の受信データを可視化したものではありません。

なぜK2-155に注目が集まったのか

K2-155は地球から約237光年の距離にある恒星です。周囲ではK2-155 b、c、dという三つの惑星が確認されています。最も外側のK2-155 dは、適切な大気条件があれば液体の水が存在し得る領域の近くを公転すると考えられ、生命探索の文脈でも名前が挙がります。

もっとも、K2-155 dに海があることも、生命がいることも確認されていません。今回の電波が惑星から発信された証拠もありません。電波望遠鏡がその恒星の方向を向いていたという事実と、信号源が恒星系に存在することは、まったく別の判断です。

元の研究が見つけた1148.4167MHz付近の信号

中国の研究チームはFASTで33の系外惑星系を観測したデータに、狭帯域信号を探索する解析手法を適用しました。成果は2026年9月発行の査読誌『The Astronomical Journal』に掲載されています。

その中の候補「NBS 260108」は、約1148.4167メガヘルツという狭い周波数帯に現れました。狭い帯域に集中し、周波数が時間とともに変わる信号は、SETIで人工技術の痕跡を探す際の手掛かりになります。しかし、同じ特徴は地球の無線機器や衛星などでも生じ得ます。

元の研究では、受信偏波や他の観測方向にも現れる類似信号など、地球由来の電波干渉を疑わせる事情を確認し、候補を低優先度と評価しました。正体が最後まで特定できていないからといって、地球外由来の可能性が高いという意味にはなりません。

10月31日の独立再解析で、何が進んだのか

The Contact ProjectはFASTの元データの一部を入手し、約1148.4167MHzの近くにあるスペクトル上の特徴を再構成しました。8つの時間ブロックにまたがる13回分のサンプルを調べ、ある観測時刻については18の受信ビームを比較しています。

同チームは、想定した周波数の軌跡に沿って信号強度が繰り返し高くなる様子を、暫定的な解析結果として示しました。また、解析スクリプト、数値結果、作業記録など65ファイルをまとめた資料をZenodoで公開し、他の研究者が確認できる形にしています。

この成果の意味は「宇宙人の電波であると裏付けた」ことではありません。限定したデータを取り出し、同じ特徴を測定・再構成できるかを検証する一歩です。今回の報告は査読前であり、較正済みの全データによる独立追試には至っていません。

FASTデータセンターが示した次の調査範囲

The Contact Projectによれば、10月31日にFASTデータセンターから返信があり、2021年9月の観測に対応する元ファイルの範囲が案内されました。具体的にはF0009〜F0059のファイル群です。

今後は連続した時系列で信号がどのように変化するか、別ビームとの比較で地上の干渉を除外できるか、偏波情報や機器の較正条件をどう整合させるかが焦点になります。FASTの担当者が地球外由来を認めたという意味ではありません。

「謎のまま」と「人工物の証拠」は違う

地球外知的生命の探索では、一つの電波の強さよりも、再現性、発信方向、周波数の時間変化、複数の観測装置による確認が重要です。電波源が未特定というだけでは、自然現象や地球上の人工信号より地球外文明を優先する根拠にはなりません。

逆に、最初の解釈に決着がついていない以上、観測記録を保存し、第三者が検証することには科学的な価値があります。疑問を持つことと、結論を先取りすることを分ける姿勢が求められます。

AWN独自分析――2026年に本当に進んだのは「証拠の検証」

このニュースを「238光年先から宇宙人のメッセージを受信」と報じれば注目は集まるでしょう。しかし、それでは研究が実際に示したことを正しく伝えられません。新しいのは、2021年の記録の一部を独立グループが追い直し、解析記録を公開したという手続き上の前進です。

今後、連続データと複数ビームの検証が進み、地球由来の説明がより強くなる可能性も、調べるべき点が増える可能性もあります。AWNでは、そのどちらも追跡していきます。

関連するAWN記事

一次資料

【編集部注】独立再解析は元の研究を反証・再確認した確定的な結果ではありません。観測は2021年、元の査読論文は2026年、今回の暫定的な再解析公開は2026年10月31日です。調査基準日:2026年11月8日。

コメント

5つ星のうち0と評価されています。
まだ評価がありません

評価を追加

海外の一次情報を、日本語で。

​

海外ニュース、政府公開資料、研究論文、AI・テクノロジー、宇宙など、日本語ではまだ十分に紹介されていない情報を、株式会社アシーマが原文・一次資料から読み解いてお届けします。

Acima Intelligence

bottom of page