アメリカ食文化(ピザ編):🍕それ、ほんとにピザ?アメリカが生んだ“もうひとつのピザ文化”
- A.S.
- 7月1日
- 読了時間: 6分
こんにちは!
先日イタリアレストランでピザを食べながら、思い出したこと、そしてもしかしたら多くの日本人は気が付いていないかもしれないと思った「ピザ」に関するお話をお伝えしていきたいと思います!

〜イタリア人も仰天!アメリカ式ピザの進化と誤解の物語〜
ところで、「ピザ」と聞くと、あなたは何を思い浮かべるでしょうか?
とろけるチーズ?
厚くてフワフワの生地?
ドミノピザのCM??
実はこれ、典型的な“アメリカ式ピザ”のイメージです。アメリカ食文化の一端として独自に発展したこのスタイルは、本家イタリアのピザとは、見た目も、味も、そもそも「何をピザと呼ぶのか」という哲学さえも、まったく異なります!
今回は、イタリアからアメリカに渡り、独自の進化を遂げた「アメリカのピザ文化」を掘り下げてみましょう。
イタリア人が「それはピザじゃない!」と叫びたくなる理由、アメリカ国内の地域ごとのピザの個性、そして“ピザをパイと呼ぶ”年配アメリカ人たちのちょっと面白い習慣まで、文化の香ばしさがぎゅっと詰まった「ピザ」を、じっくり味わっていただきます!!
🍕まず、イタリアのピザとは何か?
ピザの起源は古代ローマ時代にまでさかのぼるとも言われますが、現在のピザの原型は18〜19世紀のナポリで誕生しました。
庶民のための手軽な食事として、石窯で焼かれた薄い生地にトマトとモッツァレラチーズ、バジルを乗せた「ピッツァ・マルゲリータ」がその代表格です。
イタリアのピザは以下のような特徴を持ちます:
生地は薄く、周縁はカリッと、中央はもっちり
基本はナイフとフォークで食べる(手で持って食べるのは子供か観光客!)
素材の鮮度とシンプルさが命
サイズは一人一枚が基本
ピザ職人には厳格な修行があり、「真のナポリピッツァ協会」による公式ガイドラインさえ存在します。
つまり、イタリア人にとってピザは「文化遺産」そのものなのです。
アメリカ上陸、そしてアメリカ食文化を象徴する「ピザ革命」の始まり
20世紀初頭、イタリアからアメリカへ移民した人々が、故郷の味としてピザを持ち込みました。
最初のピザ店は1905年、ニューヨークに誕生した「ロンバルディーズ」と言われています。
しかし、そこからアメリカ独自の「ピザ進化論」がスタートします。
大量生産、冷凍技術、ファーストフード文化の発展を背景に、ピザは「家庭料理」から「全国民的スナック」へと姿を変えていきます。
そしてアメリカ人の胃袋に合わせ、次のような特徴が定着していきました。
生地が厚く、大きく、チーズと具材がたっぷり
持ち帰り・デリバリー文化に特化
シェアして食べるのが前提
カジュアルな食事=手でつまむ、紙皿でOK
つまり、ピザが“気軽な大衆食”として再定義されたのがアメリカだったのです。
🍕イタリア人がアメリカのピザにブチギレた話
あるイタリアの料理研究家は、ニューヨークで食べたピザに対し、こうコメントしました。
「あれはもう、ただの“チーズケーキ on パン”だ」
アメリカの「ディープディッシュピザ」を初めて見たナポリ人の反応はもっと率直でした。
「えっ……これは……ラザニア?いや、ケーキ??ピザじゃないよね?」
これらの逸話は、イタリア人にとってのピザがどれほど「聖域」であるかを物語っています。そして彼らにとって、アメリカのピザは“異教の冒涜”にも見えるのかもしれません。
とはいえ、アメリカのピザにはアメリカの美学があり、それは決して「劣化版」ではありません。むしろ、それぞれの文化に合わせて「進化」した結果なのです!
🗺️アメリカのピザは、地域ごとに“性格”がある!
アメリカの広大な国土では、地域によってピザのスタイルもさまざまです。
🍕ニューヨークスタイル
薄くて大きな一切れを手で折って食べる
チーズたっぷり、油もたっぷり
街角のピザ屋で1スライスから買える手軽さが魅力
🍕シカゴ・ディープディッシュ
パイのような深さで具材を“盛る”
フォークとナイフで食べる、まるでチーズラザニアのような重量級
オーブンでじっくり焼くので、見た目は“鍋料理”に近い
🍕デトロイトスタイル
四角い鉄板で焼かれ、カリカリのチーズの縁が特徴
生地はふっくら、パンのような食感
上に乗せるソースは「後がけ」スタイル
🍕カリフォルニアスタイル
グルメ志向でオーガニック野菜やアボカド、ゴートチーズなどを使用
健康志向の強い層に人気
ピザを“アート”として楽しむトレンドの先駆け
まさに、ピザはアメリカの地域文化そのものといっても過言ではありません!!
🥧なぜピザを「パイ(pie)」と呼ぶの?
ところで、アメリカでは年配の人ほど「ピザパイ(pizza pie)」という言い方をします。これはなぜでしょうか?
実は、これは初期のイタリア系移民が使っていた「ピッツァ・ピエナ(pizza piena)」という言葉が語源になったとされています。「piena」は「詰まった」という意味で、具を詰めて焼いた料理=“パイ”と英語圏で解釈されたのです。
「pizza」は単独では通じにくかったため、英語で親しまれやすい「pie(パイ)」という単語を使って「pizza pie」と呼ぶのが普通だったようです。
そして、20世紀中頃までは、「pizza pie」という呼び方がごく一般的だったようです。
現在でも、70代以上の年配者(特に北東部出身)では「pie=ピザ」の意味で使うことがあります(中西部在住の知り合いにも数名パイという人がいます!)
さらにアメリカでは、丸くてカットされた食べ物=パイという感覚もあったため、自然と「ピザ=パイ」という表現が広まったようです。
今ではやや古風な言い回しになりましたが、昔ながらのニューヨーカー、特にイタリア系の年配の方にとっては、「ピザ=パイ」という感覚が今でも残っており、「You want a slice of pie?」と言われたら、それはピザのことかもしれません。 ちなみに、現代の若者や非イタリア系の人々も「a slice of pie」と聞くと、普通は「アップルパイ」などの“甘いデザートパイ”を想像するのが主流ですのでご安心を(笑)
🍽️ピザに映る文化の違い、そしてその魅力
イタリアとアメリカ、どちらのピザが「本物」かを決める必要はありません。
それぞれの土地が育んだ背景と人々の暮らしが、ピザという食べ物にしっかりと刻まれているからです。
イタリアのピザ:素材を尊び、手仕事を重んじる「スローフードの象徴」
アメリカのピザ:自由にカスタムし、分け合う「ポップカルチャーの象徴」
どちらにも共通するのは、「みんなで囲む楽しさ」と「一口で広がる幸福感」。
アメリカのピザは、ただの「模倣品」ではありません。
移民文化と地域文化、そして大衆の好みによって独自の進化を遂げた“もうひとつのピザ文化”です!
次にあなたがピザを食べるとき、その一切れの奥にある歴史と文化とユーモアにも、ちょっとだけ思いをはせてみませんか?
Comments