星間彗星3I/ATLASの氷は「塵まじり」 JWSTが示した太陽系外の惑星材料との共通点
太陽系の外で生まれ、私たちの太陽系を通過した星間彗星「3I/ATLAS」。その氷の微粒子をジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(JWST)で調べた研究で、これまで太陽系の彗星で観測されてきたものとは異なる赤外線の特徴が確認されました。研究者は、直径およそ1マイクロメートル以下の氷と塵(ちり)が混ざった粒子で、この特徴を説明できるとしています。
成果をまとめた論文は2026年10月26日に米学術誌『The Astrophysical Journal Letters』に掲載され、11月5日には海外の天文学メディアでも改めて取り上げられました。重要なのは「地球外生命の痕跡を見つけた」という話ではなく、別の恒星系で生まれた氷の性質を、太陽系外縁の天体と直接比較できるようになったことです。
赤外線で見えた「3マイクロメートル」の強い吸収
研究は、米サウスウエスト研究所のシルビア・プロトパパ(Silvia Protopapa)氏らによるものです。JWSTの近赤外線分光器NIRSpecを使い、2025年8月6日、同年12月22日、2026年4月1日の3回にわたる観測を解析しました。彗星が太陽へ近づく前から遠ざかるまで、約8か月にわたるデータです。
水の氷は一般に、波長約3、1.5、2.0マイクロメートル付近に特徴的な吸収を示します。ところが3I/ATLASでは、3マイクロメートル付近の吸収が明瞭な一方、1.5と2.0マイクロメートルの特徴は弱いか、ほとんど見られませんでした。
研究チームは光が粒子内部で散乱する過程をモデル化し、氷だけの粒よりも、氷と光を吸収する耐熱性の塵が混じった微粒子で観測スペクトルを再現しやすいと結論づけています。これは粒子を採取して成分分析した結果ではなく、分光観測とモデルの照合から得た解釈です。
海王星の外側にある氷天体と、意外な共通点
3I/ATLASの氷の特徴は、太陽系の一般的な彗星の一部とは違うものの、海王星の外側を公転する太陽系外縁天体(TNO)の一部に近いと報告されています。比較しているのは主として水氷の赤外線吸収の形であり、彗星と外縁天体が同じ場所で生まれた、あるいは全体の組成が同じという意味ではありません。
この共通点が重要なのは、異なる恒星系でも、惑星の材料となる微小な氷粒子に似た物理的性質が生じ得ることを示唆するためです。研究チームは、惑星形成円盤でできた粒子の性質が、その後に形成される小天体にも一部保存される可能性を考えています。
氷は変化したのか——結晶化と粒子サイズは未解決
最後の2026年4月の観測では、以前と比較して大きめの氷を多く含む粒子が加わった可能性が示されました。3.1マイクロメートル近辺には結晶性の水氷と整合する小さな構造もあります。
ただし、これは「太陽の熱で氷が結晶に変化した」と断定できる証拠ではありません。結晶性の氷が最初から存在し、粒の大きさや塵の混ざり方だけが変化した可能性も残っています。彗星表面の浸食で新しい物質が露出したのか、太陽光による加熱が観測上の差を生んだのかも、今後の検証課題です。
AWN独自視点——「奇妙さ」ではなく、比較できるデータに価値がある
3I/ATLASは太陽系外から飛来した極めて貴重な観測対象ですが、「普通の彗星と違う」という一つの特徴だけで特別な起源を断定することはできません。今回の研究が優れているのは、観測時期と波長を明示し、太陽系内外の複数の天体と定量的に比較している点です。
日本の研究者を含む天文学界でも、星間天体の観測結果を別々の観測装置・時期・モデルで照合することが重要になります。今後はほかの星間彗星でも同じ分光特徴が現れるか、今回の推定が別の粒子モデルでも再現されるかを追跡したいところです。
なお、JWSTによる今回の研究結果は、3I/ATLASが人工物であるという仮説を支持したものではなく、生命の存在を示したものでもありません。氷と塵の性質に関する研究として位置づける必要があります。
一次資料・関連資料・画像クレジット
論文の掲載日は2026年10月26日、研究所の公式発表も同日です。11月5日の関連記事によって再び注目されていますが、研究結果の発表日を11月5日と取り違えないようにしています。
アイキャッチは3I/ATLASの2025年7月21日のハッブル観測画像(資料写真)で、今回の水氷のスペクトルそのものではありません。Credit: NASA, ESA, D. Jewitt (UCLA); Image Processing: J. DePasquale (STScI)。ESA/Hubble、CC BY 4.0。





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