脱プラスチック代替品の貿易は4,840億ドル 国連が指摘する「原料だけでは稼げない」構造
国連貿易開発会議(UN Trade and Development、UNCTAD)は2026年11月5日、プラスチックの代替となり得る非プラスチック製品の世界輸出額が2024年に4,840億ドルだったと公表しました。紙、ガラス、天然繊維、鉱物、海藻由来の材料などが含まれ、従来型プラスチックの輸出額約1兆1,000億ドルとは大きな差があります。
重要なのは市場の大きさだけではありません。UNCTADのデータによれば、代替品の輸出額のうち、加工によって付加価値を高めた製品は約35%にとどまります。「何を原料として売るか」だけでなく、「どこで製品に加工し、利益を得るか」が新たな国際貿易の課題になっています。
4,840億ドルという数字が示すこと
UNCTADの2024年統計では、非プラスチック代替品の世界輸出額は4,840億ドルで、2022年のピークから約14%減少しました。したがって、「脱プラスチック市場が毎年一貫して急拡大している」という解釈は正確ではありません。
また、非プラスチック代替品とプラスチック製品の分類は、代替可能な品目をもとにした統計上の整理です。4,840億ドルすべてが実際にプラスチック製品から置き換わった売上であるという意味でもありません。
UNCTADはこの統計を「試験的(experimental)」系列と位置づけています。商品分類の改訂や国別データの整合性などによって、細かな比較に誤差や断絶が生じ得ることも明記しています。
途上国の輸出シェアは約4分の1から42%へ
2005年には約4分の1だった開発途上国の世界輸出シェアは、2024年には42%に上昇しました。一方、先進国は58%です。地域別では欧州が38%、アジアが33%を占めています(UNCTADの統計ダッシュボード)。
ただし、輸出シェアの上昇がそのまま生産地域での雇用増や所得向上につながるとは限りません。原材料を供給していても、その後の加工、規格認証、包装、販売、流通の工程を別の国や企業が担えば、付加価値の取り分は変わります。
加工品は35%、約1,700億ドル——どこで価値が生まれるか
UNCTADによると、2024年に世界で取引された非プラスチック代替品のうち、原材料は3分の2近くを占め、付加価値製品は約35%、約1,700億ドルでした。植物繊維や鉱物を輸出するだけでなく、生活用品や工業材料などへ加工する能力が重要になると指摘しています。
ケニアでは、通常は焼却されていたパイナップルの葉3,300トンを活用して、繊維製品用の原料を100トン超生産する実証事業が紹介されています。これは新しい輸出産業の可能性を示す例ですが、世界市場全体で同じような採算性があると証明したものではありません。
国際競争で重要になるのは、原料調達だけでなく、加工設備、品質保証、安定供給、輸出規格への適合、コスト競争力です。
「非プラスチック=環境に良い」とは限らない
紙やガラス、天然繊維は従来のプラスチックを代替する候補ですが、材料を切り替えるだけで環境負荷が必ず小さくなるわけではありません。製造時のエネルギー使用、重量に伴う輸送負荷、水使用、繰り返し使用できる回数、廃棄・回収の仕組みまで含めて判断する必要があります。
UNCTAD自身も、環境への効果は代替材料がどのように生産・使用・処分されるかで異なると注意を促しています。したがって、企業は「脱プラスチック」という表示だけでなく、ライフサイクル全体の負荷と実際の使用条件を検証することが重要です。
日本企業への影響——素材・包装・調達に新たな判断軸
日本の製紙、包装、化学、繊維、食品・日用品メーカーにとって、国際的な代替材料の競争は調達・製品開発の両面で関係します。輸入される天然繊維の価格や規格、輸出先の環境基準、使い終わった包装の回収制度などによって、経済合理性は変わります。
日本の企業が今検討すべきなのは、ある素材への一斉切替ではなく、商品ごとの性能、衛生条件、環境負荷、供給安定性を比べることです。原料供給国との協業や加工技術の移転には事業機会がありますが、国連の輸出総額だけから国内需要や収益率を推定することはできません。
AWNの視点——「市場規模」の次に付加価値の分配を問う
今回の数字が示すのは、非プラスチック代替品の国際取引がすでに巨大である一方、原料と加工品の間には大きな構造的な違いがあることです。資源を持つ国がそれだけで最終的な利益を得られるわけではなく、技術、品質規格、加工産業への投資も必要になります。
11月26日にはOECDとUNCTADが代替製品の持続可能性基準を議論するワークショップを予定しています。今後は輸出金額の増減に加え、材料の環境性能をどう測定し、どの国・企業が加工や販売の価値を獲得するかを追跡します。
一次資料・画像クレジット
UNCTADが11月5日に公表した分析と、2026年10月2日更新の統計ダッシュボードを照合しました。掲載数字は2024年の輸出額であり、2026年の実績ではありません。
アイキャッチ:スウェーデンの紙パルプ加工工場の資料写真(2014年撮影)。写真はUNCTADが取り上げた特定の実証事業を写したものではありません。Credit: Work With Sounds。Wikimedia Commons、CC BY-SA 4.0。





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