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魚の種類が増えても海は豊かにならない? 北東大西洋でプランクトン多様性が減る可能性

1 日前
読了時間: 4分

英国の海洋環境・漁業・水産養殖科学センター(Cefas)は2026年11月5日、英国周辺と北東大西洋の海で、温暖化により魚類や海底生物の多様性が増える一方、食物網の土台にいるプランクトンの多様性が低下し得るとの研究結果を発表しました。

研究チームのモデルでは、今世紀半ばに魚類と海底の無脊椎動物の種の豊かさがそれぞれ約12%増える可能性がある一方、植物プランクトンは約3%、動物プランクトンは約7%減ると見積もられています。注目点は「魚が増える」という単純な話ではなく、食物連鎖の階層ごとに異なる変化が起き得ることです。

 

 

43年間・18万点超のサンプルを統合

 

研究は英Cefasを中心に、英国、ノルウェー、オランダ、デンマークの研究者らが進めました。約43年間に集められた18万点以上の生物試料の情報を統合し、植物プランクトン、動物プランクトン、海底生物、魚類という4つのグループを同じ枠組みで分析しています。

学術論文は『Science Advances』に2026年10月7日オンライン公開され、研究機関が11月5日に改めて成果を紹介しました。ここで示される将来の割合は2026年の実測変化ではなく、温暖化のシナリオと統計モデルに基づく予測です。

 

 

魚の種類が増えても、豊かな海とは限らない

 

気温や海水温が上がると、暖かい海にすむ魚が北へ分布を広げることがあります。中緯度の海域では、その結果として「確認される魚種が増える」という変化が起こり得ます。しかし、餌となるプランクトンが同じように増えるとは限りません。

Cefasは、今世紀末に地球全体の気温が約3℃上昇する条件を想定した解析について、北東大西洋の一部で魚類や海底生物の種数が増える一方、プランクトンの種類が減る地域もあると説明しています。南部の英国・アイルランド・フランス沿岸では植物プランクトンが増える地域もあり、海全体が一様に減少するわけでもありません。

魚の種数が増えることと、個体数、漁獲量、食物網の安定性が増すことは別の指標です。プランクトンの減少が直ちに魚の大量死や食料不足を意味するわけではなく、将来の生態系へのリスクとして評価する必要があります。

 

 

見落とされがちな「珍しい生物」の役割

 

研究のもう一つの特徴は、観測頻度の低い希少な種が多様性の変化に与える影響を推定したことです。通常、調査回数が少ない海域では、珍しい種ほど見つかりにくく、調査地点ごとに観測精度が揃いません。

そこでチームは高度な統計モデルと機械学習を活用し、観測されていない種も含めた多様性の変化を推定しました。海水温上昇などによって珍しい種が先に姿を消したり、別の海域へ広がったりする場合、漁業で重要な魚だけを数えていては変化を捉えにくくなります。

この手法は、漁場の保全、海洋保護区の設計、洋上風力発電施設の立地など、将来の海洋管理における早期警戒指標の候補としても期待されています。

 

 

日本への示唆——「獲れる魚の種類」だけを見ない

 

今回の研究対象は英国周辺および北東大西洋であり、この数値をそのまま北海道沖や日本海、太平洋の漁場に当てはめることはできません。海流、水温、魚種、漁業管理制度が異なるためです。

ただし、海水温の変化に伴う魚の分布移動は日本でも重要なテーマです。漁獲量に加えて、餌となるプランクトンや海底生物、珍しい種の推移を同時に追うという研究上の発想は、日本の漁業資源管理にも参考になるでしょう。

AWNとして注目したいのは、将来の危機を断定することではなく、どの海域・どの生物群が変化し、どの観測値でそれを確かめられるかです。新たな予測指標が実際の海の変化をどの程度早く捉えるか、今後の検証が必要です。

 

 

一次資料・関連資料・画像クレジット

 

11月5日付のCefas公式発表と、10月7日公開の査読付き論文に基づいています。アイキャッチ画像は2004年に北海付近で観測された植物プランクトンの衛星写真です。今回の研究で作成された予測地図ではありません。

画像:デンマーク周辺のスカゲラク海峡から北海に広がる植物プランクトンの衛星画像(過去の資料画像)。Credit: Jeff Schmaltz, MODIS Rapid Response Team, NASA/GSFC。米国政府制作のパブリックドメイン画像。

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