米国、ロシアVTB銀行を対イラン権限で追加指定 二次制裁リスクを拡大
米財務省は2026年9月14日、ロシア大手銀行VTB Bank Public Joint Stock Company(VTB銀行)を、イランの金融部門で活動しているとして大統領令(E.O.)13902に基づき追加指定しました。VTBはすでに対ロシア制裁でブロック対象でしたが、今回、対イラン制裁の権限が新たに加わり、第三国の金融機関にとって二次制裁リスクが一段と高まります。
画像:モスクワのVTB24本部ビル(2018年撮影)の参考写真。撮影:Andrey Filippov/CC BY 2.0。今回の対イラン取引や制裁対象行為そのものを撮影したものではありません。
9月14日、VTBをE.O.13902で追加指定
米財務省外国資産管理局(OFAC)は9月14日、VTBをイラン制裁回避への関与を理由に指定しました。根拠はE.O.13902で、イラン経済の特定部門、今回の場合は金融部門で活動する者を対象とする権限です。
OFACの同日付リスト更新では、VTBのSDNエントリーに「IRAN-EO13902」が追加され、「Additional Sanctions Information - Subject to Secondary Sanctions(追加制裁情報―二次制裁の対象)」も明記されました。所在地情報にはテヘランも追加されています。
これは「VTBが9月14日に初めて米国の制裁対象になった」という意味ではありません。今回の重要点は、既存の対ロシア制裁に加えて、イラン金融部門を対象とする制裁権限が重ねられたことです。
「すでに制裁対象」なのに何が変わったのか
VTBは2022年2月、ロシアによるウクライナ全面侵攻後にE.O.14024に基づきブロッキング制裁を受けました。また2025年1月にはE.O.13662に基づく指定も受けています。したがって、米国内の資産凍結や米国人との取引禁止そのものは今回が初めてではありません。
変化したのは制裁の法的な「軸」です。OFACの現行エントリーには、対ウクライナ・ロシア関連の権限に加えて「IRAN-EO13902」が並びました。米財務省は、今回の指定後もVTBとの取引を続ける外国金融機関は従来以上の制裁リスクにさらされるとして、関係を直ちに打ち切るべきだと明言しています。
特に重要なのが二次制裁です。OFACは、関連権限で指定された者のために重要な取引を故意に実行・仲介する外国金融機関について、米国でのコルレス口座やペイヤブルスルー口座の開設・維持を禁止、または厳しい条件を課すことがあり得ると説明しています。
米財務省が問題視した対イラン取引
米財務省によると、VTBは過去3年間に、制裁対象となっているイランの金融機関とのコルレス関係を構築し、2025年1月からテヘランでのプレゼンス拡大に向けた動きを進めました。
財務省はさらに、VTBが数十億ドル規模の凍結されたイラン資産を移動させるための措置を講じ、イラン・リアルとロシア・ルーブル建てのコルレス口座を使った自国通貨決済システムを構築したとしています。その狙いはロシアとイランの二国間貿易拡大だったと米側は説明しています。
なお、これらは米財務省・OFACが制裁措置の根拠として示した認定・説明であり、裁判所による事実認定とは区別して見る必要があります。Reutersも9月14日、米財務省の発表に基づき今回の追加指定を報じています。
日本企業・金融機関への影響
今回の措置は、日本企業に「VTBとのあらゆる接触が自動的に新たな違法行為になる」という単純な話ではありません。ただし、銀行決済、貿易金融、商社取引、物流、代理店・仲介業務などでVTBやその50%以上保有先が関係する場合、取引の性質、通貨、経路、相手方、米国との接点を改めて確認する重要性が増しています。
とりわけ制裁スクリーニングでは、「ロシア制裁対象としてすでに把握しているから変更なし」と扱うのではなく、VTBに対イラン権限と二次制裁情報が追加されたことをマスターデータやルールに反映する必要があります。OFACのエントリーには上海支店やニューデリー支店も別名・所在地情報として記載されており、名称だけでなく法人・支店・所有関係を含めた確認が重要です。
実際の取引可否は、関係する法域、契約、決済経路、ライセンスの有無などによって変わります。個別案件では専門家による法務・制裁コンプライアンス確認が必要です。
ACIMA WORLD NEWSの視点
今回の指定で注目すべきなのは、米国の制裁運用が「ロシア制裁」と「イラン制裁」を別々に見る段階から、両国を結ぶ金融ネットワークを横断的に狙う段階へ進んでいることです。
企業実務では、国別リストだけを確認する方法では見落としが起きやすくなります。同じ取引先でも、指定根拠が追加されれば二次制裁や金融機関のリスク判断が変わる可能性があります。制裁対象名の有無だけでなく、どの権限で、いつ、何が追加されたのかまで一次情報で追う運用が重要です。
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一次情報
参考情報
画像について
記事画像はモスクワのVTB24本部ビルを撮影した参考写真です。撮影:Andrey Filippov。CC BY 2.0で公開されています(Wikimedia Commons)。2018年撮影で、今回の対イラン取引や制裁対象行為を示す写真ではありません。





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