top of page

テラパワー、英国でNatriumを2034年までに発電開始目標—規制審査中、建設地は未選定

9月8日
読了時間: 4分

米国の先進原子力企業テラパワー(TerraPower)は、英国で先進炉「Natrium」による発電を2034年までに始めることを目標にしています。2026年9月7日、クリス・レベスク(Chris Levesque)CEOがReutersに明らかにしました。今回のTerraPower 英国 Natrium計画で重要なのは、2034年が英国政府や規制当局によって承認済みの運転開始日ではなく、企業側が示した目標だという点です。


英国では現在、Natriumの設計についてGeneric Design Assessment(GDA、包括的設計審査)のStep 1が進行中です。Reutersによると、英国での最初の建設地はまだ選定されていません。したがって、現段階は「英国で2034年の原発稼働が決まった」という段階ではありません。


TerraPower 英国 Natrium、2034年は「会社側の目標」


Reutersが9月7日に報じたインタビューで、レベスクCEOは英国で2034年までにNatriumによる原子力発電を始めることは十分可能だとの見方を示しました。英国が実現すれば、同社にとって米国外で初めてNatriumを展開する市場になる見通しです。


ただし、ここで区別すべきなのは「企業の事業目標」と「規制上確定したスケジュール」です。英国の建設サイトは未選定であり、GDAもまだ最初の段階です。ACIMA WORLD NEWSでは、2034年を確定した稼働時期としては扱いません。


英国の規制審査は現在Step 1


テラパワーは2025年10月28日、Natriumの設計を英国のGDAに正式提出しました。これはNatriumにとって初の国際市場での規制申請です。英国のエネルギー安全保障・ネットゼロ省(DESNZ)は2026年2月に申請を受理し、英国政府の公開情報によると、規制当局は同年6月5日に3段階のGDAを開始しました。テラパワーと英国原子力規制庁(ONR)は6月16日、Step 1の開始を公表しています。


ONRはGDAについて、新しい原子力発電所の設計の安全性、セキュリティ、保障措置、環境面を、建設地ごとの判断に先立って評価する任意のプロセスと説明しています。つまり、GDAに入ったこと自体は英国での建設や運転を許可したことを意味しません。


Natrium原子炉建屋のレイアウト図
米原子力規制委員会(NRC)が公開したNatrium原子炉建屋のレイアウト図。米国プロジェクト向けの資料であり、英国の建設予定地を示すものではありません。画像:U.S. NRC / Public Domain

Natriumは345MW、蓄熱で最大500MWへ


英国政府、ONR、テラパワーの資料によると、Natriumは電気出力345MWのナトリウム冷却高速炉と、溶融塩を使ったエネルギー貯蔵システムを組み合わせた設計です。需要が高い時間帯には、貯蔵システムを使って出力を最大500MWまで高めることができます。


原子炉そのものの出力を需要に合わせて大きく変動させるのではなく、蓄熱を組み合わせて電力系統への出力を調整する点が特徴です。再生可能エネルギーが増える電力市場で、原子力をより柔軟な電源として使う構想ともいえます。


先進炉の「海外展開」が現実の規制審査へ


テラパワーは米ワイオミング州で最初のNatriumプロジェクトを進めています。英国でのGDAは、同社が米国外で初めて進める規制手続きです。英国法人TerraPower UK Ltdも2026年6月に設立され、同社は英国市場への長期的な進出姿勢を明確にしています。


世界の先進原子炉市場では、技術開発だけでなく、規制審査をどの国で通過し、実際の建設案件へつなげられるかが重要になります。英国での審査が進めば、Natriumの国際展開にとって一つの試金石になります。


日本企業が見るべきポイント


【ACIMA WORLD NEWS分析】日本の電力・原子力関連企業にとって注目すべきなのは、2034年という年だけではありません。先進炉が米国での開発から英国の設計審査へ移り、国際市場での商用展開を意識する段階に入っていることです。


先進炉の市場が拡大すれば、原子炉本体だけでなく、機器、材料、計装、エンジニアリング、品質保証、規制対応など周辺分野にも国際的な事業機会が生まれる可能性があります。一方、実際の案件化には設計審査、立地、建設許可、資金調達、燃料供給など複数の段階が残ります。日本企業は「計画発表」と「規制・建設の進捗」を分けて追う必要があります。


ACIMA WORLD NEWSの視点


今回のニュースで最も重要なのは、「2034年に英国で稼働」と断定しないことです。現時点で確認できるのは、テラパワーCEOが2034年までの発電開始を目標として示したこと、英国の規制当局が設計審査のStep 1を進めていること、そして建設地が未選定であることです。


それでも、米国で開発される先進炉が英国の正式な設計審査に入り、企業側が具体的な発電開始年を示し始めたことは、次世代原子力の国際展開を見るうえで重要な変化です。今後はGDAの進捗、建設地の選定、サイト固有の許認可、事業主体や資金調達の具体化を確認する必要があります。


一次情報・原文

TerraPower(2026年6月16日):TerraPower Takes Major Step Forward in UK Deployment with launch of TerraPower UK and Start of GDA Step 1 for Natrium® Reactor https://www.terrapower.com/TerraPower-Takes-Major-Step-Forward-in-UK-Deployment-with-launch-of-TerraPower-UK-and-Start-of-GDA-Step-1-for-Natrium-Reactor


英国原子力規制庁 ONR(2026年6月16日):TerraPower Natrium 3 Step Generic Design Assessment starts https://www.onr.org.uk/news/all-news/2026/06/terrapower-natrium-3-step-generic-design-assessment-starts


英国政府 GOV.UK:New nuclear power stations: assessing reactor designs https://www.gov.uk/guidance/new-nuclear-power-stations-assessing-reactor-designs


Reuters(2026年9月7日):Gates-backed TerraPower targets British nuclear power plant start by 2034 https://www.reuters.com/business/energy/gates-backed-terrapower-targets-british-nuclear-power-plant-start-by-2034-2026-09-07/



ヒーロー画像:米原子力規制委員会(U.S. NRC)「Diagram of TerraPower’s Proposed Natrium Advanced Reactor」、CC BY 2.0。米ワイオミング州プロジェクトの図で、英国の建設予定地を示すものではありません。https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Diagram_of_TerraPower%E2%80%99s_Proposed_Natrium_Advanced_Reactor_(53301242290).png



海外エネルギー・規制動向を日本語で調査します

株式会社アシーマでは、海外政府・規制当局・企業の一次情報を原語で確認し、日本企業向けに整理する海外情報リサーチを提供しています。海外のエネルギー政策、規制変更、競合企業、現地プロジェクトの調査や翻訳・ローカライゼーションもご相談ください。



コメント

5つ星のうち0と評価されています。
まだ評価がありません

評価を追加

海外の一次情報を、日本語で。

​

海外ニュース、政府公開資料、研究論文、AI・テクノロジー、宇宙など、日本語ではまだ十分に紹介されていない情報を、株式会社アシーマが原文・一次資料から読み解いてお届けします。

Acima Intelligence

bottom of page