NASA探査機「サイキ」、小惑星へ向け電気推進を本格化 航行時間の約90%で噴射へ
NASAジェット推進研究所(JPL)は2026年10月22日、金属に富む小惑星「プシケ(16 Psyche)」を目指す探査機「サイキ(Psyche)」が、太陽電気推進による長時間の航行段階に入ったと発表した。探査機は9月28日から推進装置をほぼ連続して稼働させ、2029年夏の到着まで、航行時間の約90%にわたり噴射を続ける計画だ。小さな力を長時間積み上げる推進技術と、小惑星そのものの成り立ちの解明という二つの側面から注目される。

9月28日から「ほぼ連続噴射」に移行
サイキは2023年10月に打ち上げられた。火星の重力を利用して軌道と速度を調整する重力アシストを成功させ、次の区間では電気推進を長時間用いる段階に入った。JPLによると、9月28日から推進装置は週1回の地球との通信確認などを除き、ほぼ継続的に動く。これは「90%の速度で飛ぶ」という意味ではなく、「航行時間の約90%で推進装置を運転する」という運用計画である。
推力は最大250ミリニュートン
一般的な化学ロケットが短時間に強い推力を出すのに対し、サイキのホール効果スラスターはキセノンを電磁場で加速して放出し、小さな力を長く生み出す。JPLが示した最大推力は250ミリニュートンで、手に持った単3電池1本の重さから受ける力と同程度という。噴射に伴う青い光は、加速されたキセノンイオンに由来する。
4基のスラスターを1基ずつ使用
探査機には4基のスラスターが搭載されるが、同時に4基を作動させるわけではない。基本的に1基ずつ運転し、航行中の運用を調整する。瞬間的な加速はごく小さくても、数年にわたり蓄積されることで大きな速度変化を得られる。JPLは航行中の最大速度について、地球上の観測者に対して時速16万900キロ超に達すると説明している。ただし、これは今この時点の実測速度ではなく、航行計画上の最大速度の説明である。

電力を生む75平方メートルの太陽電池
サイキには十字形に広がる2組の太陽電池アレイがあり、受光面積は合計約75平方メートル。推進装置だけでなく機器やバッテリーにも電力を供給する。打ち上げ時に積んだキセノンは約1,090キログラムで、NASAによれば2026年10月までの約3年間で、そのおよそ3分の1を使用した。太陽から遠ざかるほど受け取れる光は弱まるため、今後3か月ほどは最大出力で運転した後、段階的に出力を下げる予定だ。
宇宙空間で捉えた微小な「ねじれ」
長時間噴射には姿勢制御という課題もある。ホールスラスター内部でイオンが回転することで、ごく弱いトルク(ねじる力)が生じる。NASAはこの効果を宇宙空間で長期間測定したことを紹介した。探査機はリアクションホイールの回転数を変えて姿勢を保ち、必要に応じて噴射を切り替える。これは目的地への移動だけでなく、長期間の電気推進を安定運用するための実証データにもなる。
目指すのは金属に富む小惑星「プシケ」
探査機が向かう小惑星は、最大幅が約280キロメートルに達する。かつて成長途中の天体(微惑星)の金属質の核だった可能性があるが、まだ確定した事実ではない。2029年夏に到着した後は周回軌道に入り、主要観測期間の約2年間にわたり地形や物理的特徴などを調べる。もし古い天体の内部が露出していると判明すれば、地球のような岩石惑星の深部を理解する手掛かりとなり得る。
日本の宇宙開発にも関係する理由
探査機の航行効率は、宇宙ミッションの設計自由度を左右する。燃料の使い方、太陽電力の確保、姿勢制御、通信の時間配分などを実機で積み重ねて検証することは、将来の深宇宙探査にも重要だ。今回の発表は新たな小惑星の発見や生命の確認ではない。長距離航行を支える推進装置が次の運用段階に入り、その性能を継続的に検証しているというニュースである。
今後の焦点と一次資料
注目すべき点は、推進装置の運転率と実際の運用実績、太陽から遠ざかるにつれ必要になる出力調整、そして2029年の接近と軌道投入が予定通り進むかである。小惑星が古い金属核なのかという科学的な答えは、到着後の観測を待たなければならない。
一次資料:NASAジェット推進研究所(2026年10月22日) https://www.jpl.nasa.gov/news/pedal-to-the-metal-nasas-psyche-heads-toward-asteroid-belt/





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