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ホルムズ海峡周辺の商船襲撃、10月に28件 IMO確認の中東海域事件は累計120件

1 分前
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2026年10月、ペルシャ湾とインド洋をつなぐホルムズ海峡周辺で商船への攻撃が記録的な水準に達した。ワシントン近東政策研究所のノアム・レイダン上級研究員が管理する海上事件データによると、10月23日時点で海峡と周辺海域の攻撃は「確認・報告された」ものを合わせて28件。同研究所が2017年から追跡する期間で、単月として最多という。

国連の専門機関である国際海事機関(IMO)は別に、10月22日時点でホルムズ海峡を含む中東広域の「確認済み事件」120件と、確認済み船員死亡24人を公表している。28件と120件は対象期間も地理的範囲も確認方法も違うため、同じ統計として比較したり足し合わせたりしてはならない。

カバー画像:2023年8月6日のホルムズ海峡を航行する米海軍・沿岸警備隊などの艦艇の記録写真。2026年10月の事件とは無関係の資料写真。Photo: NAVCENT Public Affairs / U.S. Naval Forces Central Command・U.S. 5th Fleet、DVIDS Photo ID 7961078(Public Domain)。

 

 

10月28件の出所と「過去最多」の意味

 

28件はIMOの公式月間確定値ではない。レイダン氏と同研究所の公開事件マップに基づく件数で、10月23日のロイター通信が同氏への取材により公表した。対象はホルムズ海峡だけでなく周辺海域も含む。研究所のマップは2017年からの船舶への攻撃を記録しており、その対象期間で10月が最多だったという趣旨だ。

このマップによると、米国・イスラエルとイランの戦争が始まった2026年2月28日からの累計は113件。「confirmed and reported attacks(確認済みおよび報告された攻撃)」という分類であるため、IMOの確認済み事件一覧とは厳密に同じ母集団ではない。

 

「113件と120件の差」は未確認事件数ではない

 

研究所113件、IMO120件の差である7件を「未確認の攻撃」や「記録漏れ」と推測するのは不適切だ。どの海域の、どの期間の、どの種類の被害を数えたのか、更新タイミングと集計基準を調べる必要がある。いずれも継続更新されるため、日付を示さずに固定的な件数として使用することは避けたい。

 

 

IMOの正式一覧が示す120件と24人の犠牲

 

IMOは10月22日時点で、中東関連海域における確認済み事件を120件、船員の死亡を24人と公表した。公開一覧は船名、IMO登録番号、日時、位置、被害を列挙する。これはホルムズ海峡内だけの120件ではなく、より広い中東地域の確認済み事件数だ。

たとえば10月13日にはコンテナ船「GFS PRIDE」のホルムズ海峡での沈没が記録された。10月20日には同海峡で貨物船「AL DASMA」が再び攻撃を受けて損傷したと記載されている。IMOの一覧で確認できるのはこれらの被害であり、すべての事件について攻撃主体まで確定されたという意味ではない。

 

 

大型原油タンカーにも被害――輸送費と供給リスク

 

ロイター通信はIMOの事件一覧と船舶追跡情報を照合し、約200万バレルを積める大型原油タンカー(VLCC)30隻超がこれまでに被害を受け、うち11隻が10月に損傷したと分析している。これはロイターによるデータ照合の結果であり、IMOが「VLCC30隻超」を公式見出しで発表したと混同してはならない。

ホルムズ海峡は原油・液化天然ガスの輸送に重要な海上交通路である。船体損傷が増えれば、運航停止や修理、運賃、戦争危険保険、代替船・代替航路の手配などの費用が膨らむ可能性がある。船舶の旗国、所有者、積み荷の買い手が異なる場合も多く、紛争当事国以外の企業にも影響しうる。

 

攻撃件数は原油の供給喪失量ではない

 

「10月に28件」を原油タンカー28隻の喪失や、原油28隻分の不足と読み替えることはできない。対象には多種の商船があり、同じ船が複数回攻撃されることもある。積載量、損傷程度、運航継続の可否によって市場への実際の影響は変わる。

2026年4月11日、ホルムズ海峡で機雷除去に向けて行動する米軍艦艇。10月の商船襲撃の現場ではない。
2026年4月11日、ホルムズ海峡での機雷除去準備に関する米中央軍の記録写真。10月の商船襲撃現場ではない。Photo: U.S. Central Command / NAVCENT Public Affairs(DVIDS Photo ID 9609002、Public Domain)。

 

 

船員、保険会社、港湾に広がる影響

 

貨物だけでなく、まず影響を受けるのは現場の船員である。IMOの確認死亡24人という数字は人的危険を示している。国際海運の安全確保を考える際には、船舶の自由な通航、乗組員の安全、救助・医療対応、沿岸の環境汚染防止を一体として扱う必要がある。

船会社や港湾管理者にとっては、通常航路を使う判断、警戒情報の更新、保険会社との調整、用船契約上の免責・危険負担などが重要になる。報道されている運賃上昇を、すべての船種・航路に共通する一律の費用増とみなすこともできない。

 

 

海事警戒情報と報告漏れの問題

 

米国海事局(MARAD)は2026年9月9日付の海事警戒情報「2026-011」で、ペルシャ湾・ホルムズ海峡・オマーン湾の商船向け安全上の問題を扱っている。警戒情報は海上輸送の危険を示すが、それ自体で全船舶の通航が停止したと意味するものではない。

英国の海上安全情報機関UKMTOは、船会社側の自主報告だけではすべての攻撃を把握できない可能性を指摘している。したがって、現時点の確認件数は実際の事件を完全に網羅した数字と断定できず、今後の確認で変更される可能性がある。

 

 

日本企業は何を見ておくべきか

 

日本企業にとって重要なのは、原油価格の変動だけではない。自社貨物が通る航路、輸送契約上の戦争危険保険、運航の迂回可能性、港湾での荷役遅れ、納期、在庫・代替調達への影響を分けて確認する必要がある。

ただし、個別企業の負担額や日本国内への供給停止を示す共通の確定値はない。現時点で、すべての日本企業が同じ割合で輸送費上昇に直面するという説明は正確ではない。

 

 

今後の焦点――件数と「被害の質」を追う

 

今後は単純な件数の増減だけでなく、船員の死傷者数、VLCCの航行不能期間、沈没や油流出、船舶保険料、実際に輸送される貨物量、港湾・船社の対応を注視すべきだ。IMOの確認事件一覧と、事件マップや海事警戒情報をそれぞれの性格に応じて併読することが欠かせない。

今回の「28件」は10月23日時点の研究者による集計、「120件・死亡24人」は10月22日時点のIMOの確認済み情報だ。違いを明示することが、危険を過小評価せず、同時に不必要な誇張を避ける報道につながる。

 

 

一次資料・参照元・画像クレジット

 

IMO・中東の確認済み船舶事件一覧(2026年10月22日時点):https://www.imo.org/en/mediacentre/hottopics/pages/middle-east-highlighted-incidents.aspx

ワシントン近東政策研究所・海上襲撃マップ概要(2026年3月3日):https://www.washingtoninstitute.org/about/press-room/press-release/washington-institute-launches-enhanced-map-tracking-attacks-middle

米国海事局(MARAD)の海事警戒情報一覧:https://www.maritime.dot.gov/msci-advisories

10月の研究者集計とVLCC被害隻数の報道(ロイター通信、10月23日):https://www.reuters.com/business/energy/ship-attacks-strait-hormuz-hit-record-high-october-2026-10-23/

画像原資料・カバー(米NAVCENT、2023年8月6日、DVIDS Public Domain):https://www.dvidshub.net/image/7961078/us-navy-us-coast-guard-transit-strait-hormuz-with-unmanned-systems

画像原資料・本文(米CENTCOM、2026年4月11日、DVIDS Public Domain):https://www.dvidshub.net/image/9609002/us-forces-start-mine-clearance-mission-strait-hormuz

カバー・本文の画像はいずれも米政府が公開した過去の記録写真であり、2026年10月の商船襲撃現場を撮影したものではない。

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