成果が出ない社員を「能力不足」で終わらせない——レイラ・ホルモジの「Right People, Right Seat」
人材配置とマネジメントで難しいのは、成果が出ていない人を見たときに「本人の能力が足りない」「もっと指導が必要だ」と結論づけてしまうことです。けれど、問題が本人ではなく、置かれている場所にあるケースもあります。
レイラ・ホルモジ(Leila Hormozi)は、2026年9月2日に公開した自身のPodcast「BUILD」の「Right People, Right Seat」で、努力や長時間労働、コーチング、フィードバックを増やしても、配置のミスマッチそのものは解決しないと説明しています。彼女が挙げるのは、「正しい人材が間違った役割にいる」「正しい人材が今の時期には合っていない」「正しい人材が間違った上司の下にいる」という3つのケースです。
日本の企業でも、成果不振をすぐに「能力不足」や「やる気」の問題として扱う前に、この3つを確認する価値があります。

成果不足は「人」の問題とは限らない
採用した時点では優秀だった人が、数か月後に期待どおりの成果を出せなくなることがあります。そのときに「採用を間違えた」と考えるのは簡単です。しかし、会社が成長すれば仕事の内容も、求められるスピードも、上司も変わります。本人が変わっていなくても、環境との組み合わせが変わるだけで成果は大きく変わります。
レイラの考え方で重要なのは、「この人を残すか辞めてもらうか」という二択にすぐ進まないことです。まず、本人と役割の組み合わせを診断します。人を評価する前に、配置を評価する。これだけで、人材に関する判断の精度はかなり変わります。
レイラが挙げる3つのミスマッチ
1.正しい人材、間違った役割
一つ目は、会社にとって必要な人材なのに、現在の役割がその人の強みと合っていないケースです。
たとえば、営業成績が高い人をそのまま営業マネージャーに昇進させても、本人が「人を育てること」より「顧客と商談すること」に強みを持っているなら、本人もチームも成果が落ちる可能性があります。優秀なプレイヤーと優秀なマネージャーに必要な能力は同じではありません。
日本企業では、昇進がほぼ唯一のキャリアアップになっている組織もあります。そこで「管理職にしないと評価していないように見える」という理由だけで役割を変えると、強みを失わせることがあります。専門職として報酬や裁量を上げる道を用意することも、適材適所の一つです。
2.正しい人材、間違った時期
二つ目は、その人自身にも役割にも問題はないものの、「今」という時期と合っていないケースです。
会社側のフェーズが変わり、これまで必要だった仕事が急に高度化することもあります。逆に、本人の生活環境や使える時間が変わり、以前と同じ責任範囲では力を発揮しにくくなることもあります。これは人格や能力の永久的な評価とは別の問題です。
重要なのは、「今できない=この人にはできない」と固定しないことです。責任範囲を一時的に変える、担当プロジェクトを変える、数か月後に再評価するなど、時間軸を含めて人材配置を考えると選択肢が増えます。
3.正しい人材、間違った上司
三つ目は、本人にも役割にも問題がないのに、上司との組み合わせによって成果が出ないケースです。
細かく指示されると動きにくい人もいれば、目標だけ渡されて放置されると判断に迷う人もいます。スピードを重視する上司と、慎重に情報を集めてから動く部下では、どちらが悪いわけでもなくても摩擦が起きます。
成果不振が始まった時期と、上司や組織体制が変わった時期が重なっているなら、本人への追加研修だけでなく、レポートラインを変えることも検討すべきです。
日本企業で使える「配置見直し」の4つの質問
「人が悪いのか、配置が悪いのか」を感覚で判断すると、結局は好き嫌いや印象に引っ張られます。そこで、次の4つを順番に確認すると整理しやすくなります。
① 過去に成果が出ていた条件は何か
同じ人が以前は成果を出していたなら、能力が突然なくなったと考えるより、何が変わったのかを見る方が合理的です。仕事内容、裁量、チーム構成、上司、顧客層、会社の成長段階などを比較します。
② 今の仕事は「強み」を使う時間が多いか
一日の大半を、本人が不得意な業務や消耗する業務に使っていないかを確認します。役職名ではなく、実際の時間の使い方を見るのがポイントです。
③ 成果が落ちた直前に何が変わったか
昇進、担当変更、新しい上司、会社の急成長、家庭環境の変化など、タイミングを時系列で並べます。「いつから」を明確にすると、原因候補がかなり絞れます。
④ 90日だけ配置を変えたら何を検証できるか
いきなり退職や大規模な組織変更に進む必要はありません。担当範囲や上司を90日だけ変えて、成果と本人の状態がどう変わるかを見る。小さく配置転換を試すことで、推測ではなくデータで判断できます。
「育成」と「配置転換」を混同しない
スキルが足りないなら、教育やコーチングは有効です。しかし、役割そのものが合っていない人に研修を増やしても、本人の負担が増えるだけかもしれません。
これは「育成をやめる」という話ではありません。育成で解決する問題と、配置で解決する問題を分けるということです。会社側がすべてを「本人の努力」で解決しようとすると、本来は経営側が直すべき組織設計の問題が見えなくなります。
この点は、以前紹介したナタリー・ドーソンの「3つの天井」にも通じます。会社の成長を止める原因を個人の努力だけに求めず、組織の構造そのものを見る視点です。
経営者が見るべきは「誰を残すか」だけではない
人材の判断で難しいのは、「辞めてもらう決断」だけではありません。むしろ、優秀な人を間違った場所に置き続けないことの方が難しい場合があります。
役割は一度決めたら固定するものではなく、会社の成長に合わせて見直すものです。採用時の職務記述書や過去の肩書きに縛られず、「今、この人が最も価値を出せる場所はどこか」を問い直す必要があります。
また、経営者自身が仕事を抱え込みすぎると、誰に何を任せればいいかを考える時間すらなくなります。ダン・マーテルの「時間を買い戻す」という考え方と組み合わせると、人材配置は単なる人事ではなく、経営者の時間配分と組織設計の問題として見えてきます。
まとめ:人を変える前に、席を変えられないか考える
成果が出ない人を見たとき、「もっと頑張ってもらう」「研修を増やす」「辞めてもらう」の前に、確認できることがあります。役割は合っているか。今の時期に合っているか。上司との組み合わせは合っているか。
レイラの「Right People, Right Seat」は、人に甘くするための考え方ではありません。誰をどこに置けば組織全体の成果が最大になるかを、感情ではなく構造として考えるための視点です。
原典は、2026年9月2日公開の「BUILD with Leila Hormozi」エピソード「Right People, Right Seat」です。
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