WMO、年末のエルニーニョが過去40年の監視範囲を超える可能性 NASAはニューギニアの記録的火災を報告
世界気象機関(WMO)は2026年10月21日、現在発生しているエルニーニョが年末に向けてさらに強まり、過去40年ほどの監視で用いてきた範囲を超える可能性があると警告した。新しい季節予測では、エルニーニョの強さを示す熱帯太平洋の「Niño 3.4」海域について、2026年11月~2027年1月の平均海面水温偏差が約+3.8℃に達すると予測している。
翌22日、NASA Earth Observatoryはニューギニア島で広範囲に続く火災と煙の衛星観測、火災由来の炭素排出量の推定を公表した。両発表は別個のものだが、強いエルニーニョに伴う降雨不足と、人間による火の利用が重なるリスクを具体的に示している。
カバー画像:NASA Earth Observatory / Michala Garrison。NOAA-20/VIIRSによる2026年10月11日の観測。地理的な文脈を保つため原画像の縦横比を維持しています。
WMOの「+3.8℃」は何を意味するのか
WMOが21日に公表した季節予測でいう「+3.8℃」は、地球全体の平均気温が3.8℃上がるという意味ではない。エルニーニョ監視に用いる熱帯太平洋の特定海域「Niño 3.4」の海面水温が、基準となる平均値よりどれほど高いかを示す偏差だ。対象も1日ではなく、2026年11月から2027年1月にかけての季節平均である。
WMOは複数の予測モデルを組み合わせた結果を示し、2026年12月頃に強さがピークに近づく可能性を説明した。ただしこれは将来予測であり、すでに+3.8℃を観測したという発表ではない。実際の値や地域への影響は、今後の観測と各国の予報で確かめる必要がある。
NASAが捉えたニューギニアの煙
NASA Earth Observatoryが22日に掲載した衛星画像は、米海洋大気庁の気象衛星NOAA-20に搭載されたVIIRSが10月11日に撮影したものだ。島の南部を中心に煙が広がる様子が写っている。画像の撮影日とNASAによる公表日を混同してはいけない。
NASAによると、9~10月のニューギニアではエルニーニョに伴う干ばつが続き、煙に伴う大気汚染で航空便の遅延・欠航や学校の休校も報告された。パプアニューギニア南部の一部では90日を超えて雨がほとんど降らず、8月以降の降水量が平年の約5~10%にとどまった地域もあるという。

火災排出量、パプアニューギニア側は同時期として最大水準
NASAが引用したGlobal Fire Emissions Database(GFED)の衛星データに基づく推定によれば、島東部のパプアニューギニアで10月19日までに発生した火災由来の炭素排出量は約3,200万トンに達した。これは過去の記録と比べ、同じ年内時点までの累積値として最大だった。
一方、インドネシア領パプア側では約3,500万トン超と推定され、過去の厳しい火災年である1997年と2015年に次ぐ水準だという。この2数値はそれぞれ異なる行政地域の排出量であり、島全体を表す単独の値ではない。
ここでいう「炭素3,200万トン」は、温室効果ガスの二酸化炭素3,200万トンを意味しない。また、排出された炭素を直接測定した値でもない。衛星による火災検出と植生・燃料に関する情報を組み合わせて計算した推定値であり、更新される可能性がある。
参考図:GFEDのパプアニューギニア火災炭素排出量グラフ(更新される暫定値)。2026年の累積値と2001~2025年を比較できます。本文の約3,200万トンはNASAが報告した10月19日時点の推定であり、リンク先の最新値とは時点が異なる場合があります。 https://www.globalfiredata.org/current/countries/Oceania/Papua_New_Guinea.png
干ばつと人間活動は、どう重なったのか
NASAの取材に応じた研究者によれば、ニューギニアの火災の大多数は人間による着火が発端とみられる。農地や牧草地の管理、土地開発、狩猟などに伴う火入れが、乾燥した状況では意図せず燃え広がることがある。
エルニーニョは火災の「唯一の原因」ではない
エルニーニョは熱帯太平洋の海面水温と大気循環を通じ、地域ごとの降雨パターンを変える。その結果として乾燥し、火が広がりやすくなる地域が生じる。ただし個々の火災の着火要因、土地利用、現地の管理体制も重要で、火災をすべてエルニーニョの直接のせいにすることはできない。
森林減少が進む地域への懸念
NASAはインドネシア領パプアでの土地開発にも言及し、油ヤシやパルプ材のプランテーション、都市拡大、採掘などを背景に森林減少が進んでいると説明した。乾燥と土地利用の変化が重なると、植生や生物多様性だけでなく、煙による健康被害にも目を向ける必要がある。
GFED研究の新しさは「ほぼリアルタイムの推定」
10月15日に査読誌『Earth System Science Data』で公開された研究は、GFEDのデータ基盤を、VIIRSの火災検出を使った日次の準リアルタイム推定に拡張する手法を説明している。複数の衛星データにより、現在進行形の火災を過去の火災記録と比較できるようにする試みだ。
ただし、準リアルタイムのモデル推定は確定値ではない。古い衛星との検出特性の差や植生ごとの燃料消費推定などが不確かさを生むため、最新値ほど更新の可能性を念頭に置く必要がある。
読者にとって何が重要か
WMOは今回、予測を防災・人道支援へ早期に結びつけるよう訴えた。南部アフリカでは農業や水資源への圧力、東アフリカの一部では多雨・洪水リスク、東南アジアでは高温・少雨と煙害リスクが想定される。ただし、これらは季節傾向の見通しであり、特定の日・場所の災害発生を断定する予報ではない。
ニューギニアの火災は、将来のモデル予測とは異なり、すでに衛星で観測され、社会生活への影響も報告されている現象だ。世界の食料供給、物流、大気環境、森林資源に関わる人々にとって、気象モデルの動きと衛星観測、地域の行政情報を一緒に追うことが重要になる。
今後の焦点と検証すべき数字
第一に、Niño 3.4海域の実測海面水温偏差が、WMOの季節平均予測にどこまで接近するか。第二に、ニューギニア南部で例年11月頃に始まる雨季が火災をどの程度収束させるか。第三に、GFEDの火災排出量の暫定値が更新後も記録的水準を示すか、である。
現段階では「+3.8℃に達した」「島全体で史上最大の火災が確定した」とは言えない。一方、観測された煙と推定排出量の急増は、すでに起きている異例の事態として継続監視に値する。
一次資料・参考資料
WMO(2026年10月21日):Global Seasonal Climate Update for November–December–January 2026/27:https://wmo.int/resources/publication-series/global-seasonal-climate-updates/gscu-ndj2026
WMO事務局長声明(2026年10月21日):https://wmo.int/secretariat/celeste-saulo/el-nino-and-humanitarian-action
NASA Earth Observatory(2026年10月22日):Fires Char New Guinea:https://science.nasa.gov/earth/earth-observatory/fires-char-new-guinea/
Chenほか、Earth System Science Data(2026年10月15日、査読済み):https://doi.org/10.5194/essd-18-7535-2026
Global Fire Emissions Database(GFED):https://www.globalfiredata.org/
NASA / NOAA 衛星観測データ:https://www.earthdata.nasa.gov/
画像利用条件:NASAの画像・メディア利用指針 https://www.nasa.gov/nasa-brand-center/images-and-media/
GFEDの引用・利用案内:https://www.globalfiredata.org/faq.html





コメント