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米政府、量子関連4社と最大6億7500万ドル規模の最終契約 CHIPS法が製造基盤へ

5 日前
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米国の量子コンピューティング政策が、研究支援から『製造基盤づくり』へ一段踏み込みました。2026年9月8日、D-Wave Quantum、Rigetti Computing、Quantinuum、GlobalFoundries(GF)の4社はそれぞれ、米商務省のCHIPS Research and Development Officeとの最終・確定契約を発表しました。

今回の量子コンピューティング支援で重要なのは、4社が公表した支援額の上限を合計すると最大6億7500万ドル規模になる一方、これは「6億7500万ドルが9月8日に一括で支払われた」という意味ではないことです。D-Waveは最大1億ドル、GFは5年間で所定のマイルストーン達成に応じ最大3億7500万ドル。RigettiとQuantinuumはそれぞれ1億ドルのawardを公表しています。

契約の法的ステータスも5月時点とは異なります。5月21日に米商務省が発表したのは9社とのLetter of Intent(LOI=意向表明書)で、当時は総額20億1300万ドルの『planned funding』でした。今回の4社発表は、そのうち一部がdefinitive agreement/finalized agreementへ進んだことを示します。

量子コンピューティング支援、LOIから最終契約へ

D-Waveは9月8日、米商務省とのdefinitive agreementを締結し、CHIPS and Science Actに基づく最大1億ドルの資金へアクセスできるようになったと発表しました。対象は超伝導方式のアニーリング型とゲート型の双方で、次世代システムの研究開発やスケールアップを支援します。

Rigettiは同日、完全子会社Rigetti & Co, LLCが米商務省と1億ドルのawardに関するdefinitive agreementを締結したと発表しました。対象は、読み出し電子回路の小型・統合化、極低温設備の拡張、新しい高接続チップ構造の製造技術という3つの研究開発プロジェクトです。

ただしRigetti自身の注意書きは、契約で想定される資金額を実際に受領できるか、またその時期について不確実性が残ると明記しています。したがって、本記事では『1億ドルをすでに受領した』とは表現しません。

Quantinuumも9月8日、米商務省との1億ドルのCHIPS R&D awardをfinalizeしたと発表しました。支援は、耐故障性のあるトラップドイオン量子コンピューターを拡張するための研究開発と、米国内の量子半導体製造能力に充てられます。

量子技術にも使われる希釈冷凍機の例。今回の受給4社の設備ではありません。Photo: Oak Ridge National Laboratory / CC BY 2.0, via Wikimedia Commons.

量子技術に使われる希釈冷凍機の研究設備
量子技術にも使われる希釈冷凍機の例。今回の受給4社の設備ではありません。Photo: Oak Ridge National Laboratory / CC BY 2.0, via Wikimedia Commons.

GlobalFoundriesは「量子ファウンドリー」を量産へ近づける

GFは、量子技術向け事業Quantum Technology Solutions(QTS)を拡大するため、3億7500万ドルのR&D awardについて最終契約を締結したと発表しました。契約上、GFが受け取れるのは5年間で最大3億7500万ドルで、所定のマイルストーン達成が条件です。

GFが強調しているのは、研究室で作る量子デバイスから、再現性のあるスケーラブルな製造への移行です。同社は極低温CMOS、先端パッケージング、異種集積などを量子向け製造能力として挙げています。

Quantinuumの発表では、GFは次世代のイオントラップと制御用エレクトロニクスを製造する複数のファウンドリーの一つとなり、300mmウエハー技術に重点を置くとされています。Monarch Quantumは、トラップドイオン方式で必要となるレーザーや光学部品を担当する計画です。

米政府が株式を取得する異例の支援設計

5月21日の米商務省・NISTの発表では、9社への資金提供条件として、米政府が各社の少数・非支配株式を取得すると明記されていました。9月8日のD-WaveとRigettiの発表も、自社について同じ条件を確認しています。

The Wall Street Journalも9月8日、D-Wave、Rigetti、Quantinuumの3社に対する計3億ドルのCHIPS法案件について、米商務省が各社の少数持分を取得すると報じました。個別の最終契約で公開されている条件の粒度は企業ごとに異なるため、ACIMA WORLD NEWSでは公開情報から持分比率を推計していません。

これは通常の補助金より踏み込んだ設計です。国が技術開発を支援するだけでなく、成功した場合の価値上昇の一部を納税者側へ戻す仕組みを組み込もうとしていることが分かります。

なぜ今、量子コンピューターの「製造」なのか

量子コンピューターの競争は、単純な量子ビット数だけではありません。大規模化するには、デバイスの再現性、極低温環境、読み出し回路、光学系、先端パッケージング、製造歩留まりなど、半導体産業に近い工学課題を解く必要があります。

5月の米商務省発表も、9社への支援対象としてデバイス再現性、光学系の複雑さ、エラー率、極低温システム統合、制御ハードウェア、読み出し電子回路、フォトニック損失、インターコネクトなどを列挙していました。今回の最終契約は、それらを米国内で製造できる供給網へ結びつける段階に入ったことを示しています。

日本企業にとって何が重要か

日本への直接的な発注や投資が今回発表されたわけではありません。ここは分けて考える必要があります。

一方で、量子半導体のスケールアップには、300mmウエハー、先端パッケージング、極低温エレクトロニクス、フォトニクス、レーザー、材料、製造・検査技術など幅広い供給網が必要です。米国内の量子製造エコシステムが形成されれば、日本の材料・製造装置・計測・光学関連企業にとっても、将来の仕様、認証、提携、調達条件を早期に把握する意味は大きくなります。これはACIMA WORLD NEWSの分析です。

またQuantinuumは公式発表で、日本にも拠点を持つと説明しています。今回の1億ドル支援が日本拠点に直接配分されるとの発表はありませんが、日本の企業・研究機関にとって接点を持ち得る企業が、米国の量子製造政策の中核案件に入った点は注目に値します。

ACIMA WORLD NEWSの視点

AIではGPUやデータセンターの確保が国家競争力の一部になりました。量子でも同じように、優れたアルゴリズムや研究成果だけでなく『誰が、どこで、安定して作れるのか』が政策の中心へ移りつつあります。

今回の最大6億7500万ドル規模という数字以上に重要なのは、CHIPS法の対象が従来型半導体の工場支援だけでなく、量子コンピューターの部品・製造・供給網へ広がっていることです。量子技術が研究テーマから産業政策へ移る過程を示すニュースとして、今後の追加契約も追う価値があります。

一次情報・独立照合

米商務省/NIST(2026年5月21日、9社とのLOI) https://www.nist.gov/news-events/news/2026/05/department-commerce-announces-letters-intent-9-companies-2-billion

D-Wave Quantum(2026年9月8日) https://www.dwavequantum.com/company/newsroom/press-release/d-wave-finalizes-agreement-with-u-s-department-of-commerce-for-up-to-100-million/

Rigetti Computing(2026年9月8日) https://investors.rigetti.com/news-releases/news-release-details/rigetti-signs-definitive-agreement-100m-us-government-accelerate

Quantinuum(2026年9月8日) https://ir.quantinuum.com/news-releases/news-release-details/quantinuum-finalizes-100-million-chips-rd-award-us-department

GlobalFoundries(2026年9月8日) https://gf.com/news-and-events/news/globalfoundries-and-us-department-of-commerce-finalize-375m-r-and-d-award-to-advance-american-quantum-leadership/

独立照合:The Wall Street Journal(2026年9月8日) https://www.wsj.com/tech/u-s-gets-minority-stakes-in-d-wave-rigetti-quantinuum-in-300-million-chips-act-funding-deal-a7bad600

海外の政策・企業発表を、日本企業の意思決定に使える形で調査・整理します。一次情報の確認、英語資料の精査、海外ニュースの背景調査についてはアシーマにご相談ください。

【画像クレジット】ヒーロー画像:D-Waveの量子コンピューター用ウェハー(2018年撮影)。今回のCHIPS支援で製造されたものではありません。Photo: Steve Jurvetson / CC BY 2.0, via Wikimedia Commons。本文画像:Oak Ridge National Laboratory / CC BY 2.0, via Wikimedia Commons。

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