ギリシャ小型衛星「ERMIS-3」、地上とのレーザー通信に成功 ESAが11月2日に発表
人工衛星と地球の間でデータを送るとき、従来は電波が中心でした。しかし、非常に細いレーザー光を使えば、小さな衛星でも大量の情報を送れる可能性があります。
欧州宇宙機関(ESA)は2026年11月2日、ギリシャの小型衛星「ERMIS-3」が、同国の地上局とのレーザー通信に成功したと発表しました。ギリシャで低軌道衛星との光通信リンクが成立したのは初めてとされます。
ギリシャ初の衛星レーザー通信リンクを確立
ERMIS-3は、アテネ国立カポディストリアス大学が開発した8U規格のキューブサットです。ESAによると、ギリシャ国内のHolomondas Optical Ground Station(HolOGS-1)との光通信リンクを確立しました。
地上局を開発したのはテッサロニキ・アリストテレス大学です。衛星側にはリトアニア企業Astrolightの光通信端末「ATLAS-1」を搭載し、地上側にも対応する光学機器を使用しました。
レーザー通信は何が難しいのか
光通信では、宇宙を移動する衛星から地上の受信機へ、非常に細い光のビームを正確に向け続ける必要があります。衛星は低軌道を秒速数キロメートルで動き、通信できる時間も限られます。
衛星と地上局が互いの位置を見つけて信号を捕まえ、ずれないよう追いかける仕組みはPAT(Pointing, Acquisition and Tracking)と呼ばれます。今回の試験は、この技術が小型衛星でも機能した点に意義があります。

初回の通信後、昼夜の自律運用へ
ESAの詳しい発表によると、ERMIS-3は運用開始後の最初の有効な通過機会に光学的な接触を確立しました。その後およそ1週間で定常的な運用に入り、現在は昼夜にまたがって1日約2回のリンクを自動的に実施しています。
雲や大気の揺らぎは光通信の弱点ですが、今回の最初の接続は雲のある条件下でも達成されたと報告されています。あらゆる悪天候で通信できることまで実証したわけではありません。
「最大10Gbps」は実際の測定速度なのか
ESAの詳細記事には、運用中のシステムについて「最大10Gbpsに対応する余裕がある」と記されています。これは光通信の設計・運用上の能力を示す説明であり、実際に10Gbpsの地上ダウンリンク速度を計測したという発表とは区別する必要があります。
報告の中心は、光の方向合わせと捕捉・追尾、接続の自動運用に成功したという事実です。大容量画像をどの速度で何ギガバイト伝送したかなどの詳細な実績値は、今後の発表で確認する必要があります。
3月30日打ち上げ、衛星3機の計画の一部
ERMIS-3は2026年3月30日、ERMIS-1、ERMIS-2とともに打ち上げられました。ギリシャの国家宇宙計画の一環で、ESAがギリシャ政府を支援しながら進める小型衛星技術の実証事業に位置づけられています。
ERMIS-3には光通信装置のほか、複数の波長を細かく分けて撮影するハイパースペクトルカメラやデータ処理装置も搭載されています。将来的には、詳細な地球観測データを短時間で地上へ送ることを目指します。
オランダのESA施設でも試験
打ち上げ前には、オランダにあるESAの欧州宇宙技術センター(ESTEC)で環境試験や光学位置合わせ試験が行われました。小型衛星は機体の姿勢がわずかにずれても光のビームが受信機から外れやすく、地上での調整が重要です。
衛星を開発した大学、ギリシャの地上局、リトアニアの端末メーカー、ESAの試験設備という国際協力が、今回の結果につながりました。

光通信が将来の衛星に必要な理由
地球観測衛星が扱う写真や画像データは、解像度やセンサー性能の向上に伴って大きくなっています。電波にも重要な役割がありますが、周波数の利用調整や帯域幅には制約があります。
レーザー通信は、条件が整えば高いデータ伝送能力を期待できます。一方、雲に遮られることや、正確な姿勢制御が必要なことなど、電波とは異なる課題があります。いずれか一方に完全に置き換わると決まったわけではありません。
今回成功したことと、これからの課題
今回確認されたのは、ギリシャの8U小型衛星と地上局の間で光通信リンクが成立し、自律的な運用へ進んだことです。これは、低コストで多数打ち上げられる小型衛星の通信技術にとって実用化への一歩です。
今後の課題は、季節や天候が変わった際の接続安定性、観測データの実運用伝送速度、複数地上局での運用などです。新技術が継続的なサービスになるかどうかは、実証後の蓄積で判断されます。
一次資料と画像の位置づけ
一次資料:ESA「CubeSat achieves challenging laser link to ground」(2026年11月2日)、およびESAの詳細報告「Greek optical communications demonstration CubeSat, ERMIS-3」。
記事中のESTEC試験写真は実際の通信の瞬間ではありません。また、ESAの光地上局の資料写真はギリシャのHolOGS-1ではないため、キャプションで区別しています。





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