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グリーンランドの氷帽下で未知の湖を確認 融氷水の放出を2〜3か月遅らせる可能性

4 日前
読了時間: 5分

グリーンランド北東部の巨大な氷帽の下に、これまで記録されていなかった湖が存在することが衛星観測から明らかになった。

欧州宇宙機関(ESA)は2026年10月15日、この湖が夏に発生する融氷水を大量に蓄え、下流への放出を数か月遅らせる可能性を紹介した。

研究対象は、グリーンランド最大の独立した氷帽であるフラーデ・イスブリンク(Flade Isblink)の西部に位置する「Lake B」と呼ばれる氷底湖だ。

研究論文は7月3日に科学誌『Scientific Reports』で公開されている。ESAによる今回の発表は、その研究結果を衛星観測と気候モデルの観点から詳しく解説したものだ。

 

 

氷の下に隠されていた巨大な貯水池

 

研究チームによると、Lake Bは夏季に生じる融氷水を一時的に蓄え、秋になると排水する周期的な活動を繰り返している。

推定される最大貯水量は約3億7,000万立方メートルで、不確かさは約1億1,000万立方メートルに達する。これは湖に流れ込む流域の年間流出水量の約63%に相当する。ただし、この割合には±23ポイントという推定上の不確かさがある。

注目されるのは、氷の表面で生じた水が直ちに下流へ移動するわけではないことだ。研究では、湖の排水が主に9月から10月に発生し、夏の融解ピークから下流への淡水流出までに2〜3か月の時間差が生じることが確認された。

 

衛星は湖そのものではなく、氷の動きを捉えた

 

氷底湖は厚い氷に覆われているため、宇宙から湖面を直接撮影することはできない。

研究チームはNASAのICESat-2による高度測定、欧州のSentinel-1によるレーダー干渉観測、地形データ、地域気候モデルを組み合わせた。

2018年10月から2024年12月までの観測では、湖に水が蓄積すると上部の氷面が上昇し、排水時には低下する周期的な変化が捉えられた。

水がたまる時期には氷面が最大約10メートル上昇し、排水時には1日最大約34センチメートルの速度で低下した。こうした変化を複数の観測手段で照合することで、氷の下にある水の動きを間接的に推定している。

 

 

2022年だけ排水が確認されなかった理由

 

今回の研究で興味深いのは、観測期間中の2022年には、ほかの年に見られた湖の排水イベントが確認されなかったことだ。2022年は観測対象期間のなかで表面融解量が最も少ない年だった。

研究者らは、一定量以上の水が湖に流入しなければ、大規模な排水が始まらない可能性を指摘している。ただし、排水開始に必要な水量や水圧の具体的なしきい値が確定したわけではない。

 

以前から知られていた別の氷底湖との違い

 

フラーデ・イスブリンクでは、2011年に別の氷底湖が急速に排水されたことが以前から知られている。この排水では、氷の表面に深さ約70メートルの大きなくぼみが生まれた。

今回報告されたLake Bは、その既知の湖とは別の場所にある。研究チームは両者の間に水文学的なつながりがある証拠を確認できなかったと報告している。

したがって、今回の発見を「2011年に排水された湖を再発見した」と理解するのは正しくない。

宇宙から撮影したグリーンランド周辺の衛星画像。今回の氷底湖とは別の資料画像
グリーンランドの衛星画像。NASA Ames Research Center/Wikimedia Commons、パブリックドメイン。Lake Bを直接示す画像ではない。

 

 

氷の下から流れ出た水はどこへ向かうのか

 

研究者らは、Lake Bの排水と周辺の湖との関係も調べた。対象となったのは、グリーンランド最大の氷縁湖として知られるロマー湖(Romer Sø)だ。

衛星観測では、氷表面の融解がピークを迎えた約2〜3か月後に、ロマー湖の水量が増加する傾向が見られた。この変化はLake Bの排水時期と整合している。

研究チームは、地下で一時的に蓄えられた水が、下流の湖の水量変動に寄与している可能性を示した。ただし、水の移動経路を直接観測したわけではなく、すべての水量変化がLake Bによって引き起こされたと確定したものではない。

 

 

気候変動研究で重要な理由

 

氷床や氷帽の融解を予測するモデルでは、氷の表面で生じた水が比較的速く下流へ移動すると仮定する場合がある。しかし今回の研究は、氷の下に蓄えられた水が、流出の時期を大きく変える場合があることを示している。

淡水が湖やフィヨルドへ流入する時期が変われば、水温や塩分の分布、生態系への栄養供給にも影響が生じる可能性がある。

重要なのは、氷がどれだけ融けたかという総量だけではない。その水がいつ、どの場所から、どの程度の速度で流れ出すのかも、将来の環境変化を理解するうえで重要になる。

一方、今回の一つの湖の観測結果だけから、グリーンランド全体の海面上昇量や将来の気候変化を直接予測することはできない。

 

 

日本の読者にとっての意味と今後の焦点

 

今回の研究は、衛星観測によって直接見ることのできない地下の水の動きを推定できることを示す事例でもある。

ICESat-2、Sentinel-1、地形モデル、気候モデルという異なるデータを組み合わせることで、単一の観測手法では把握しにくい現象を解明している。

今後の焦点は、同様の季節的な貯留・排水を行う湖がグリーンランドのほかの場所にも存在するのか、また融解量が増えた場合に排水周期がどう変化するのかという点だ。

こうした観測の積み重ねは、北極圏の淡水循環や氷河周辺の生態系の変化をより正確に理解するための基礎資料になる。

 

 

一次資料・画像出典

 

ESA公式発表(2026年10月15日):https://eo4society.esa.int/2026/10/15/reshaping-greenlands-meltwater-pathways/

原著論文(2026年7月3日):https://www.nature.com/articles/s41598-026-60541-7

GEUS研究記録:https://pub.geus.dk/en/publications/previously-undocumented-subglacial-lake-beneath-flade-isblink-sto/

カバー写真:Greenland ice sheet USGS.jpg(USGS/NASA、パブリックドメイン)。本文写真:Greenland 42.74746W 71.57394N.jpg(NASA Ames Research Center、パブリックドメイン)。いずれも資料画像でありLake B自体を撮影したものではない。

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