EU、脱炭素技術77事業に34億ユーロの支援先を選定 小型原子炉も初採択
欧州委員会は2026年10月19日、欧州の脱炭素技術を支えるInnovation Fund(イノベーション基金)の公募で、77事業を計34億ユーロの支援対象として選定したと発表した。対象は欧州経済領域(EEA)の23カ国にわたり、初めて小型モジュール炉と大気から二酸化炭素を直接回収・貯留する事業が含まれた。ただし「選定」は資金の支払いや施設の稼働がすべて完了したことを意味しない。

カバー画像:EU旗と欧州委員会本部周辺の資料写真(2009年撮影。今回の選定事業を撮影したものではない)。Photo: Hlynz、CC BY-SA 3.0。出典: https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Berlaymont_EU_flags.jpg
77事業・23カ国、選定額は34億ユーロ
今回の公募は2025年12月に始まったInnovation Fundのネットゼロ技術向け公募で、欧州委員会は2026年10月19日に選定結果を示した。プロジェクトはエネルギー多消費産業、再生可能エネルギー、蓄電、クリーン技術の製造、低排出モビリティー、重要原料の処理・リサイクル、代替燃料、産業の炭素管理など幅広い。地域は23カ国にまたがり、単一分野への投資ではない。
初めて小型モジュール炉と直接空気回収が入った
欧州委員会の発表によれば、今回のリストには小型モジュール炉(SMR)事業と、大気中のCO₂を直接回収して貯留するDACCS事業が初めて含まれた。さらにクリーン技術のサプライチェーンを支える重要原材料関連の事業も採択された。技術が商業的に成功したという認定ではなく、温室効果ガス削減の見込み、技術の新規性、成熟度、事業拡張性、費用効率などを評価した選定だ。
原資はEUの排出枠取引収入
Innovation FundはEU排出量取引制度(EU ETS)の排出枠オークションから得られる収入を、低炭素技術の実装へ振り向ける仕組みである。政府の一般財源だけに依存する補助金とは異なり、排出に価格を付けて得た資金を産業の技術転換に再投資する設計だ。欧州の産業競争力やエネルギー安全保障の強化も、欧州委員会が明示した目的に含まれる。
排出削減「2億9,000万トン」は予測値
欧州委員会は、選定された77事業が運転開始後の最初の10年間に、CO₂換算で約2億9,000万トンの排出回避につながる可能性を見込んでいる。しかしこれは推計であり、2026年10月時点ですでに削減された実績値ではない。事業の完成時期や実際の稼働率、電力・燃料条件などによって実現量は変わり得る。数字を成果確定として扱うべきではない。
日本の企業・技術開発にとっての意味
今回の選定はEU域外企業への新たな直接補助金を一律に認める措置ではない。一方、欧州で資金が向かう分野は、蓄電、重要鉱物の精製・回収、工場の熱源転換、低排出燃料、炭素回収機器など日本企業も競争・協業する市場と重なる。採択事業の具体的な発注先・調達条件は個別に確認する必要があり、この発表だけで日本企業への発注が決まったとは言えない。
今後の焦点は契約と事業化
現段階は対象事業が選ばれたという発表で、すべての補助金契約が締結済みとは限らない。今後は選定先との契約準備、設備投資、実装時期、長期の排出削減実績が検証対象となる。同日には別制度のLIFEプログラムで135件・3億9,000万ユーロ超の環境関連事業支援も発表されたが、これは今回のInnovation Fundの77事業・34億ユーロとは別勘定であり、二重に数えてはならない。
一次資料と制度資料





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