「非人間由来の機体を見た」元UAP責任者の証言に、ローブ博士が求めた「物的証拠」
資料写真:2023年5月31日に開催されたNASAのUAP独立研究チーム公開会合。今回のFox News対談や、ストラットン氏が見たと主張する機体を写したものではありません。写真:NASA/Joel Kowsky(NHQ202305310010)。写真の出典/利用条件
すでに機体が保管されているなら、その実物や記録を検証できるはずではないか。ローブ氏の問いを、政府の情報開示文書と科学研究の両面から読み解きます。
情報確認:2026年10月18日
「非人間由来の存在と機体を、自分の目で見た」。
米政府のUAPタスクフォース(UAPTF)で責任者を務めたジェイ・ストラットン氏が、Fox Newsのブレット・ベイヤー氏との対談で、こうした趣旨の証言をしました。政府と防衛関連企業が非人間由来の機体を保有し、その技術を解明する秘密の取り組みが続いているとも主張しています。ローブ氏が紹介した対談の発言
この発言を受け、天体物理学者アヴィ・ローブ博士が求めたのは、さらに詳しい体験談ではありません。科学者が調べられるデジタルデータ、あるいは物的証拠の提示でした。
今回の焦点は、空に新たな観測装置を向けることだけではありません。すでに誰かが機体を保管しているというのなら、その証拠にたどり着き、検証できるのかという問題です。ローブ氏の論考
ストラットン氏が語ったのは、空の目撃談だけではない
ストラットン氏は、国防情報局(DIA)や海軍情報局(ONI)などで勤務した元国防情報上級幹部で、UAPTFの初代責任者です。出版社HarperCollinsの著者紹介では、陸軍・空軍や情報機関を含む32年以上の勤務歴が記されています。出版社による著者紹介
航空安全団体Americans for Safe Aerospaceの紹介では、UAPTFの責任者として、政府機関を横断してUAPの観測情報の収集・報告を標準化する取り組みを率いたとされています。同団体の人物紹介
Fox Newsの公式動画ページには、ストラットン氏の『Special Report』出演が2026年10月13日付で掲載されています。ローブ氏が原文でリンクしているのは、それとは別に、ストラットン氏自身がXに投稿した映像です。Fox News公式動画ページ/X投稿へのリンクを含むローブ氏原文
この出演は、回顧録『Out of the Shadows: Revealing the Truth About Non-Human Intelligent Life』の刊行と重なります。同書はHarperCollins傘下のWilliam Morrowから2026年10月13日に刊行されました。出版社の書籍ページ/書誌情報/刊行元を伝える報道
書籍の刊行と同時期の発言であることは、読者が発言の背景を理解するための情報です。ただし、出版の事実だけで証言の真偽や発言の動機を判断することはできません。
ローブ氏が記事に引用した対談では、ストラットン氏は政府による機体保有を肯定し、非人間由来の存在や機体を自身が目撃したと説明しました。さらに、機体を回収し、構造や仕組みを調べて技術を再現する「リバースエンジニアリング」の計画が存在すると述べています。
公開されない理由については、情報を管理してきた人々が、社会は真実を受け止められないと考えているという見方を示しました。一方、少なくとも人類だけが知的存在ではないという基本的な事実は、社会に伝えられるはずだと訴えています。ローブ氏による発言の引用
ここで区別したいのは、本人がそう証言したことと、機体の出自が第三者によって確認されたことは別であるという点です。「非人間由来」という言葉には、目にした対象についての本人の判断も含まれます。
「あるというのなら、調べられる形で示してほしい」
ローブ氏は、ストラットン氏の経歴を軽視しているわけではありません。原文では、その長い実務経験を認めたうえで、発言を裏付ける公開検証可能なデータが必要だと述べています。
この要求は、地球外文明による訪問の可能性を否定するものではありません。むしろ、重大な発見につながるかもしれないからこそ、個人の確信を超えて確かめたいという姿勢です。ローブ氏の論考
NASAの2023年のUAP独立研究報告も、目撃証言は観測時刻や場所などの傾向を探る手掛かりになり得る一方、機器による裏付けなしには、対象の性質を決定的に判断することはできないと説明しています。NASA報告・印刷ページ29〜30
証言は、調査の入口になり得ます。しかし、その入口から先に進むには、別の人が調べても評価できる材料が必要になります。
ローブ氏は、すでに機体が保管されているのであれば、新しい観測所の完成を待つ必要はないと指摘します。保有者は機体そのもの、あるいはそれに結び付く記録を提示できるのではないか。大統領に実物を見せられないのか、と問いかけています。ローブ氏の論考
これから未知の対象を探すことと、すでにあるとされる証拠を調べること。この二つは、並行して進められるはずです。
NDA解除は「誰にでも話してよい」という意味ではない
原文の重要な背景となるのが、UAPに関する秘密保持契約(NDA)の扱いを示した米政府の覚書です。
エリック・バーリソン下院議員は2026年8月1日、政権から公開を認められた予備的な実施指針として、この文書を公表しました。原本には、国家情報首席副長官アーロン・ルーカス(Aaron Lukas)の署名と7月31日の日付があります。議員事務所の公表資料/覚書原本・1ページ目
文書が対象とするのは、現職・元政府職員や契約業者が、AAROまたはPURSUEの権限を持つ政府担当者にUAP情報を伝える際のNDAなどの解除です。冒頭には、情報をPURSUEタスクフォースへ渡し、審査と機密解除につなげる目的が記されています。覚書原本
AAROは米政府の全領域異常解決局、PURSUEはUAP情報の機密解除・報告を進める枠組みです。
政府の指定窓口への報告と、テレビやインターネットでの一般公開は同じではありません。 この覚書を、機密情報を誰にでも無条件で公表できる許可として読むことはできません。覚書原本
その後の2026年9月14日の措置については、DefenseScoopが、米国防当局がPURSUEの公式担当者に対する対象情報の伝達に限り、NDAなどの民事・行政上の執行条項に優先する免除を発表したと報じています。こちらも、一般への無制限の公開を認める内容としては報じられていません。9月14日の措置を伝える報道
ここを区別すると、次に確認すべき点も具体的になります。情報が実際に指定窓口へ提出されたのか。提出されたなら、どのような検証が行われ、何が公開できる状態にあるのかという点です。
評議会への招待と、機密情報の報告は別の話
ローブ氏は、ユタ州のPhenomeCon 2026でストラットン氏に会った後、自身が率いるUAP科学諮問評議会への説明を依頼したと記しています。評議会メンバーのティム・ギャローデット氏も改めて働きかけたものの、その記事を書いた時点では返答がなかったという説明です。ローブ氏の記述
ただし、これはローブ氏側が公表した連絡の経緯です。応答の有無だけから、ストラットン氏が虚偽を述べている、あるいは検証を拒絶したとまでは判断できません。
また、評議会自身の説明では、対象とするのは一般に伝えられる非機密情報です。政府側のUAPガバナンス委員会から提供されたデータを検討し、観測機器や分析方法について助言する役割とされています。UAP科学諮問評議会
政府が公開した映像でも、来歴の確認は必要
データが公開されれば、それだけで科学的な検証が完了するわけでもありません。
その具体例が、米軍の公式公開サイトDVIDSに掲載されたUAP関連映像「DOW-UAP-PR055」です。AAROは、この映像が機密ネットワークへのアップロード前に加工され、受領時の状態で公開されていると説明しています。DVIDS掲載のAARO説明
同ページの時間別説明では、映像の11〜12秒に、輪郭の鮮明化、拡大、動きの追跡、コントラスト強調、通常の60%への減速を示す字幕が出るとされています。これは映像内に表示された処理内容の説明であり、編集部が個々の加工手順を再現・検証したという意味ではありません。該当する時間別説明
またAAROは、下院議員らの要請を受けて機密ネットワーク上で見つけた関連資料の多くについて、取得・受け渡し・保管の経緯(chain of custody)が裏付けられていないとしています。これは関連資料群への注意書きであり、この映像や資料全体が偽物だという判定ではありません。資料の来歴に関する注意書き
AAROは同じ説明で、公開文は情報提供のための記述であり、出来事の性質や妥当性についての分析上の結論を示すものではないとしています。DVIDS掲載の注意書き
加工されていること自体が、捏造を意味するわけではありません。ただし、速度や明るさを定量的に調べるなら、何がどのように加工されたかを把握する必要があります。
「政府のサイトに掲載されていること」と、「映像に付けられた説明がすべて検証済みであること」は、分けて考える必要があります。
なお、この映像は、ストラットン氏が見たと主張する保管機体そのものを示す資料ではありません。公開データを評価する際の注意点として取り上げています。
必要なのは、鮮明さだけではなく「確かめられること」
NASAのUAP報告は、観測機器の校正、複数の測定、撮影条件などを記録したメタデータの不足が、分析の妨げになると指摘しています。映像が鮮明であることに加え、いつ、どこで、どのような機器と設定で記録されたのかが重要です。NASA報告・印刷ページ13〜14
これを踏まえ、本記事では今後の公開資料を読む際の確認点を、次の三つに整理します。物的試料に関する項目は、編集部が追加した検証上の問いです。
確認するもの | 確かめたい点 |
映像・センサー記録 | 元データ、取得時刻・場所、機器の設定と誤差、加工の履歴は分かるか |
機体・試料の来歴 | 誰がどこで回収・採取し、誰が保管したか。試料と主張される機体との対応を確かめられるか |
分析と再検証 | 方法と測定結果が示され、別の研究者や研究機関も検証できるか |
前回の記事で紹介した、赤外線映像の6対象を鳥の群れとみる論文は、一つの例です。ローブ氏自身も共著者として参加しています。明るさの変化を測り、説明を組み立てる一方、未公開の観測機器・撮影機の情報があれば、その仮説を反証できる可能性も示しています。参照したのは、arXivの投稿履歴で2026年10月13日改訂と確認できるv3です。書誌ページのComments欄には『Scientific Reports』への投稿と記載されています。これは著者による投稿の申告であり、採択・掲載済みという意味ではありません。arXiv:2610.08692v3・投稿履歴とComments欄
この論文も、ストラットン氏の証言の真偽を直接判定するものではありません。重要なのは、主張を検証できるデータと方法を示すという手順です。
結論を、証言者にも政府にも預けない
ローブ氏の原文には、PURSUE側はまだUAPと非人間由来の技術を結び付ける証拠を見つけていないという記述もあります。ただし、本記事で確認した公開資料からは、同チームが内部で何を受け取り、どこまで調べたのかを網羅的に確認できません。この点は、ローブ氏の説明として扱います。ローブ氏の論考
政府が保有を認めていないから、証言が必ず誤りだとは限りません。反対に、証言者の経歴が確かだから、対象が非人間由来だと確定するわけでもありません。
どちらにも求めたいのは、結論を評価できる材料です。
ローブ氏はその後の論考『Take Me to the Nearest Alien Spacecraft』でも、すでに政府や企業が機体を保有しているというのであれば、実物を示し、科学的に調べる必要があるという要求を繰り返しています。後続の論考
今回の議論を、地球外生命を信じる人と信じない人の対立に縮めてしまうと、本来の問いが見えにくくなります。
保管されているという機体は、どこにあり、誰が調べられるのか。その結果を、私たちはどこまで確かめられるのか。
証言を無視するのではなく、証言を手掛かりに検証へ進む。そのための道筋を示せるかどうかが、次の重要な段階になります。
中学生にもわかる簡単まとめ
「見た」という証言は、調べるきっかけになります。 ただし、何だったのかを確かめるには、写真や映像、観測記録、実物などを別の人も調べられることが重要です。NASAのUAP報告
秘密保持契約の扱いが変わっても、すべてをテレビで話してよいわけではありません。 今回確認した政府文書は、指定された政府担当者へ情報を伝える手続きを扱っています。政府覚書
大事なのは、誰の話かだけでなく、どう確かめられるかです。 本物の発見を見逃さないためにも、誤った結論に飛びつかないためにも、検証できる材料が必要になります。
参考資料・出典
一次情報・書誌資料
Avi Loeb:Digital Data or Material Evidence Please; The Time is Ripe to Go Beyond Verbal Testimonies on UAP! — 対談の引用とローブ氏自身の主張。原文の映像出典はストラットン氏自身のX投稿です。
Fox News:ストラットン氏出演動画の公式ページ — 公式ページの掲載表示を確認。発言の日本語化はローブ氏が引用した記録に基づきます。
HarperCollins:Jay Stratton著者紹介 — DIAなどでの勤務歴と32年以上の経歴。
Americans for Safe Aerospace:人物紹介 — ONIでの経歴、UAPTF初代責任者、観測情報の収集・報告の標準化。
HarperCollins:Out of the Shadows/Google Books:同書の書誌情報 — 書名・著者・刊行日。William Morrowの表記は下記の刊行時報道でも照合。
バーリソン下院議員事務所:NDAに関する覚書の公表(2026年8月1日)/覚書原本(2026年7月31日署名) — 指定された政府担当者への報告を扱う予備的指針。
NASA:UAP Independent Study Team Final Report(2023年) — 証言とセンサーデータ:印刷ページ29〜30(PDFの31〜32ページ目)。校正とメタデータ:印刷ページ13〜14(PDFの15〜16ページ目)。
DVIDS/AARO:DOW-UAP-PR055の公開説明 — 加工前後の来歴、映像内字幕、資料群への注意書き。
Haqq-Misraほか:6対象の赤外線映像解析、arXiv:2610.08692v3 — 投稿履歴とComments欄を参照。
補足報道
DefenseScoop:PURSUE向けNDA免除に関する報道(2026年9月14日) — 9月の措置については、この報道を出典として帰属を明記。報道が参照する国防当局の発表ページは、今回の閲覧では本文を取得できませんでした。
※本記事のストラットン氏の発言の日本語化は、ローブ氏がMedium記事内に引用した対談の記録に基づきます。アシーマがストラットン氏へ直接取材した記事ではありません。回顧録については刊行の事実を扱い、書籍本文未確認の個別エピソードは追加していません。



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