top of page

【号外】人工ゲノムが細胞外で28回超の自己複製 人工生命の実現へ進む日本の研究

4 日前
読了時間: 3分

【ALife/人工生命・研究号外】2026年7月、立教大学などの研究チームが細胞を使わず、自己複製に必要なタンパク質をコードする人工ゲノムを試験管内で増やすことに成功した。『生命を作った』と誤解しないために、その新規性と未達成の部分を一次論文から整理する。

人工細胞内のDNAと分子を表現した生成イメージ
人工細胞と人工ゲノムの研究を表した生成イメージ(AI生成/ACIMA WORLD NEWS編集部制作)。実際の研究成果の顕微鏡写真ではありません。

 

 

人工ゲノムが自分自身の複製装置を作る

 

2026年7月6日公開の査読付き学術誌『Nucleic Acids Research』に、人工ゲノムの自己複製を実現した研究が掲載された。研究チームは、細胞外でDNAから必要なタンパク質を作り、そのタンパク質群を使って同じDNAを複製する反応系を構築した。

研究の中心は、53キロ塩基対(53kb)の環状DNA「RCR module-genome」。大腸菌型の染色体複製に必要な26種類のタンパク質をコードし、PUREと呼ばれる無細胞タンパク質合成系で発現させる。従来の細胞を直接増やした実験とは異なり、DNAに書き込んだ複製機能を試験管内で再構成した点が重要だ。

 

 

28回超の倍加が示す意味

 

論文はこの反応系をPRIMESと名付け、人工ゲノムの再帰的な自己複製で28回を超える倍加を支えられたと報告している。研究者が完成した複製タンパク質を継続的に外部から供給するのではなく、ゲノムの情報から複製に必要なタンパク質を生成する点が特徴だ。

ただし「28回超の倍加」はDNA量の増加を示す実験結果であり、人工細胞が28世代にわたり自律的に生き続けた、という意味ではない。細胞膜、栄養獲得、代謝、成長、細胞分裂など、生物の全機能が統合されたわけでもない。

 

 

なぜALife研究にとって重要か

 

Artificial Life(ALife=人工生命)は、生命が成立する条件や、自己複製、進化、創発を人工的なシステムで検証する研究分野だ。人工生命の実現に向けた大きな難題は「複製装置を作るための情報」と「複製装置そのもの」を同じ仕組みの中で循環させることにある。

今回の論文は、この循環のうち遺伝情報の複製を、細胞を利用せず一つの反応系で実現した。生命の全体を合成したという発表ではなく、生命に欠かせない部分機能の統合に関する研究成果だ。

 

 

別の人工細胞研究と比較すると

 

同年2月の『Nature Communications』論文は、脂質膜の小胞内で一部ゲノムの発現、DNA複製、膜合成を組み合わせた研究を報告した。今回の53kbゲノムの研究は、より大きな複製用遺伝子群と細胞外の再帰的複製に焦点を当てている。

さらに2026年7月には、90kbのゲノムを使い栄養供給、成長、複製、分裂を一つの人工細胞で扱うとするプレプリントも公開された。ただしこちらは掲載時点で査読前であり、今回の査読済み論文と同列の確立した成果としては扱わない。

 

 

地球外生命の探索ともつながる「生命の定義」

 

地球外生命を探す場合も、地球上の既知の生物と同じ化学的構造だけを想定してよいとは限らない。人工生命研究は、自己複製や進化など生命を特徴づける機能を分解し、どの条件がそろえば生命らしいシステムが成立するのかを実験で調べる。

ただし人工ゲノムの複製成功が、地球外生命の存在を示したり、未知の生命の定義を決定したりするわけではない。実際の自然界の生命起源と、研究室で人工的に再構成した過程との間には、なお大きな隔たりがある。

 

 

次に確認したい研究課題

 

今後は、複製系が膜・代謝・資源獲得・細胞分裂と一体化できるか、外部からの補助を減らしても持続的に機能するか、コピー時の変異と選択を通じた進化が起きるかが重要となる。

今回は2026年7月公表の研究を取り上げた解説型の号外であり、10月18日に新しく実験成功が発表されたという意味ではない。

コメント

5つ星のうち0と評価されています。
まだ評価がありません

評価を追加

海外の一次情報を、日本語で。

​

海外ニュース、政府公開資料、研究論文、AI・テクノロジー、宇宙など、日本語ではまだ十分に紹介されていない情報を、株式会社アシーマが原文・一次資料から読み解いてお届けします。

Acima Intelligence

bottom of page